AVMA認定獣医大学
未分類 - 2015年08月08日 (土)

日本の獣医学教育は世界的レベルなのでしょうか?少なくとも全米獣医協会(AVMA)の答えはノーのようです。
AVMAは六十年以上もまえから、海外の獣医大学の認定(Accreditation of foreign veterinary school)を行っています。現在ではオランダ、アイルランド、スコットランド、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどの獣医大学が、その認定を受けていますが、残念ながら、アジア、南米、アフリカでは、まだ一校の獣医大学も認定を受けていません。もちろんこれは、上述以外の国では獣医学教育に使用される公用語が英語ではないことが影響しているのだと思いますが、教員数や講義課目などの獣医学教育の中身についても、まだ改善するべき点が多いことを物語っているのかもしれません。
例えば、米国の獣医大学では、教員数は一学年の生徒数とほぼ同じであるほど多人数ですし、その授業内容もとても深く多方面に及んでおり、エキゾチックアニマル、臨床行動学、保健所獣医学(いわゆるShelter medicine)などの比較的に新しい分野でも、専門の教員を置いている場合が殆どです。また、日本で言う卒業一年目の代診がするような、患畜と直接的に接する診療内容を、獣医学部の学生時から既に実践しているような印象を受けます。さらに、大動物(特に馬)の臨床教育を見ると、日本の獣医大学に比べて、大学病院に来る症例数がとても多いだけでなく、私立の大動物病院に匹敵する設備と診療内容、そして、装蹄学や馬歯科学などを専門に扱う教員&技師がいる獣医大学も多く見られます。
獣医学は大学を卒業後に学ぶ面も大きいので、一般的な日本の獣医師と米国の獣医師を比較すれば、(小動物と大動物のいずれの分野においても)それほどの差はないハズです。しかし、大学教育のレベルに限って言えば、やはり日本の獣医大学よりも米国の獣医大学の方が、国家試験を合格した時点で直ちに即戦力となれる獣医師を育成しているような気がしてなりません。
AVMAでは、海外の獣医大学の認定システムについて、本当にその必要性があるのかの論議が活発となっています。特に、近年の世界経済の悪化にともない、米国外の獣医大学を認定し続けることで、米国への外国人獣医師の流入が起こり、アメリカ人獣医師の仕事が奪われる事態を懸念する声も上がっています。しかし、AVMAの管理委員であるブルックス獣医師は、「AVMAは獣医大学認定制度を通して、他の国の獣医大学が目指す、獣医学教育の標準基準を構築してきた。そして、これからも他国の獣医大学が認定を受けられる機会を維持していくことが重要であると確信している」と述べています(JAVMA. 2010; 237: 130-133)。
もちろん、AVMAのしていることが全て正しいわけではありませんし、アメリカの獣医学の真似をすれば何もかもが良くなるわけでもありません。しかし、ヨーロッパの獣医大学と同様に、日本においても、AVMAの認定を受けることを一つの目安として、獣医大学における教育内容の充実と改善を図っていくべき時代が来ているのかもしれない、と考えさせられました。

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