馬の跛行グレードの改正
診療 - 2015年08月08日 (土)

馬の跛行グレードが改正されました。
跛行(Lameness)は、馬の健康問題の八割以上を占めることが知られており、跛行検査(Lameness examination)は馬獣医師の仕事の中でも、最も頻繁かつ重要なものであると言えます。また、三科目競技の獣医検査においても、跛行の有無およびその重篤度の判定は、大切な判断要素に挙げられます。跛行検査の際に使用されるグレード法としては、全米馬臨床医協会(American Association of Equine Practitioners: AAEP)による跛行点数化法が最も一般的に用いられていますが、このグレード法が去年から改正されました。
以前の跛行点数化法では、グレード0~5を以下のように定めていました。
グレード0:いかなる状況においても跛行が認められない状態
グレード1:歩様異常に一貫性が無く、跛行の見分けが難しい状態
グレード2:常歩および速歩での直線運動では跛行の見分けが難しいものの、ある状況下(荷重、回転、登坂、硬地)では歩様異常に一貫性がある状態
グレード3:速歩での歩様異常に一貫性があり、いかなる状況下でも跛行が見分けられる状態
グレード4:重度の点頭運動、腸骨挙上、歩幅短縮などを伴い、明らかな跛行が認められる状態
グレード5:運動時および安静時に最低限の羅患肢への負重しかできず、明らかな跛行を示す状態、または動くことが不可能な状態
改正後の跛行点数化法では、グレード4の定義が変更されています。
グレード0:いかなる状況においても跛行が認められない状態
グレード1:歩様異常に一貫性が無く、跛行の見分けが難しい状態
グレード2:常歩および速歩での直線運動では跛行の見分けが難しいものの、ある状況下(荷重、回転、登坂、硬地)では歩様異常に一貫性がある状態
グレード3:速歩での歩様異常に一貫性があり、いかなる状況下でも跛行が見分けられる状態
グレード4:常歩で明らかな跛行が認められる状態
グレード5:運動時および安静時に最低限の羅患肢への負重しかできず、明らかな跛行を示す状態、または動くことが不可能な状態
この変更は僅かなように見えますが、例え速歩時の跛行が軽度~中程度であっても、常歩で明らかな跛行が見られれば自動的にグレード4になってしまいます。このため、グレード4の範囲が広がってしまい、症例報告などの際には、よほど顕著な治療効果が認められない限りでは、跛行の改善度合いがデータに示されにくい、という問題が生じると考えられます。その意味では、視診のみによる跛行グレードという、主観的検査(Subjective evaluation)に頼ることなく、屈曲試験(Flexion test)や診断麻酔(Diagnostic anesthesia)、および歩様解析(Gait analysis)による客観的評価(Objective assessment)を併用して、より信頼性の高い跛行検査を実施することが重要になってくるのかもしれません。
Copyright (C) nairegift.com/freephoto/, freedigitalphotos.net/, ashinari.com/ All Rights Reserved.
関連記事:
・馬場馬に野外騎乗をさせることの利点
・馬の跛行を傾斜地で見る
・馬の疼痛エソグラムの有用性
・つまずく馬は要注意
関連リンク:
LAMENESS EXAMS: Evaluating the lame horses. AAEP lameness score.