フロセマイド使用の是非
未分類 - 2015年08月08日 (土)

米国の競馬社会では、フロセマイド使用の是非について論議が起きています。
国際競馬委員協会(Association of Racing Commissioners International)は2011年の三月、競走馬における出走日の薬物投与(Race-day medications)を五年以内に完全に無くす、という方針を打ち出しました。これを受けて米国では、サラブレッド生産馬主協会(Thoroughbred Owners and Breeders Association)および北米競馬協会(Thoroughbred Racing Associations of North America)による協議会が開催されています。
米国では、出走日に許可されている薬物は、運動誘発性肺出血(Exercise-induced pulmonary hemorrhage: EIPH)の予防のために投与されているフロセマイドだけなので、この協議会は実質、フロセマイド投与の是非を問う機会になっています。フロセマイドについては、様々な相反する知見があり、EIPHの危険を減少させるという報告もあれば、有意なEIPH発症率および重篤度の改善にはつながらないという報告もあります。
米国における平地レースのサラブレッドでは、実にその九割に対してフロセマイド投与が行われており、競馬産業に掛かる治療費は毎年40億円に達すると言われています。しかし、EIPHという病気が、強運動に耐えられなくなった馬の呼吸器官からのSOS信号だと考えるならば、むしろフロセマイドの投与を止めて、鼻出血の症状を示した馬は速やかに出走休止させることで、疲労蓄積によって起こりうる他の重篤な事故を防ぐことが重要である、という考え方もあります。
日本の競馬場で、レース後に僅かな鼻出血が認められた場合でも、EIPHが見つかって休養になると経済的マイナスになるという理由で、厩務員がこっそり鼻血を拭き取ってしまう、という話も耳にします。しかし、これも厩舎の利益ではなく、馬の福祉を第一に考えるならば、決して許される行為ではありません。それと同じことがフロセマイド投与についても言えるのではないでしょうか?
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関連リンク:
Malinda Larkin. Renewed focus on race-day medications: Summit this summer discussing the issue. JAVMA. 2011;238(12):1543-1545.