人参ストレッチの効果
馬の飼養管理 - 2015年08月08日 (土)

人参ストレッチ(Carrot stretch)による治療効果が報告されています。
Stubbs NC, Kaiser LJ, Hauptman J, Clayton HM. Dynamic mobilisation exercises increase cross sectional area of musculus multifidus. Equine Vet J. 2011; 43(5): 522-529.
「人参ストレッチ」とは、力学的可動エクササイズ(Dynamic mobilisation exercises)とも呼ばれ、人参などのエサを馬が下方へと首を伸ばしたり、左右に首を曲げた状態で与えることで、背中や首の筋肉をストレッチさせる運動療法を指します。人参ストレッチは、専門的な技術や設備が無くても実施できることから、背部痛(Back pain)を持つ馬に対して広く行われており、過去の文献では、馬の首をこれらの位置に持ってくることで、椎間関節の可動域を増強させる効能が期待できることが示唆されています(Clayton et al. EVJ. 2010;42:688)。
今回の研究では、八頭の馬に対して、人参ストレッチを週に五日、三ヶ月にわたって実施して、この期間中の超音波検査(Ultrasonography)によって、多裂筋(Musculus multifidus)の断面積(Cross sectional area)の測定が行われました。人参ストレッチのメニューとしては、頚部屈曲(Cervical flexions)を三回、頚部伸展(Cervical extension)を一回、側方屈曲(Lateral bending)を左右にそれぞれ五回ずつ、合計で十四回のストレッチを、一日に五回実施しました。結果としては、実験前と三ヶ月目の超音波所見を比較すると、多裂筋の断面積が有意に増加しており、また、左右の多裂筋断面積の対称性(Symmetry)も有意に向上していたことが報告されています。
この研究に用いられた八頭の馬は、この三ヶ月の期間中において騎乗には用いられておらず、超音波診断によって示された筋肥大効果(Muscular hypertrophy effect)は、力学的可動エクササイズによる直接的な効能であると考えられました。しかし、これらは健常な実験馬におけるデータであるため、今後の研究では、実際に背部痛を持つ馬に対する人参ストレッチによって、疼痛の緩和(Pain releaf)、筋萎縮の逆行(Reversal of muscle atrophy)、パフォーマンスの向上などが誘導されるのか否かを、対照郡(Control group)の馬と比較しながら、より定量的に評価(Quantitative evaluation)する必要があると考えられました。
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関連リンク:
Clayton HM, Kaiser LJ, Lavagnino M, Stubbs NC. Dynamic mobilisations in cervical flexion: Effects on intervertebral angulations. Equine Vet J. 2010; 42 Suppl 38: 688-694.