衝撃波療法への規定強化の動き
未分類 - 2015年08月09日 (日)

衝撃波療法への規定強化の動きについて。
国際競馬規定の評議委員協会(Association of Racing Commissioners International Rules Committeee)では、衝撃波療法(ショックウェーブ治療:Shockwave therapy)に対する新しい規定案(Model rule)が審議されました。この問題は、騎手組合(Jockeys’ Guild)から提起されており、その背景には、衝撃波療法を受けた馬が致死的怪我(Breakdown injury)を発症して、人馬転などの大事故に至った場合、騎手の生命が重大な危険に晒される、という懸念があるのだそうです。しかし、評議委員の中には、衝撃波療法を他の治療法と同じように扱うべきである、という意見もあり、この規定強化の動きに関しては賛否両論(Controversy)があるようです。
騎手組合からは、近ごろ改定されたカリフォルニア州の競馬規定に合わせるように、国際競馬規定も変更することが要請されており、具体的には、(1)衝撃波療法の機器を指定された診療場(Designated treatment area)のみで使用すること、(2)競馬場の公定獣医師(Track’s official veterinarian)と監視員(Stewards)が衝撃波療法の記録を管理すること、(3)騎手(またはその代理人)が、レース前に騎乗同意をする時に、その馬に対して衝撃波療法が行われたか否かを、把握できるようにすること、などが含まれています。評議委員協会は採決の結果、「衝撃波療法の実施から十日間にわたって、その馬を不適格馬リスト(Ineligible list)に掲載して、その間の調教および競走を禁止する」ことを、新しい規定案の中に含めて、今後も更に協議していく事になったようです。
競走馬における衝撃波療法は、腱、靭帯、骨、関節などの、多くの運動器の疾患に対して応用されており、血管新生の誘発(Induction of neovascularization)、間葉系前駆細胞の動員(Recruitment of mesenchymal stem cells)、骨形成活動の亢進(Increased osteogenic activity)、などの作用を介して、損傷した結合組織の治癒促進の効能があるという仮説がなされています。しかし、衝撃波が当てられた箇所では、神経線維や侵害受容器の損傷(Damage to nerve fiber)、末梢神経伝達物質の枯渇(Depletion of peripheral neurotransmitters)、オピオイド分泌による開門制御作用(Gate-control effect via opioid)、などに起因して、痛覚消失効果(Analgesic effect)が見られることが報告されています。
もし、衝撃波療法によって痛みが一時的に無くなるという、「症状改善効果」(Symptom-modifying effect)が有意に存在するならば、禁止薬物である鎮痛剤の投与などと同様に、その使用に関するルール作りを進めて、馬や騎手の安全性確保に最大限の努力を払うべきである、という騎手組合の言い分は、極めて正統であると言えるのではないでしょうか。
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関連リンク:
Teresa Genaro. RCI Tightens Model Rule on Shock Wave Therapy. Blood Horse News. July 25th, 2012.