改良型の飼い桶による疝痛予防
話題 - 2015年08月09日 (日)

改良型の飼い桶を使うことで、疝痛が予防できる可能性が検討されています。
Carter MJ, Friend TH, Coverdale J, Garey SM, Adams AL, Terrill CL. A Comparison of Three Conventional Horse Feeders with the Pre-Vent Feeder. Journal of Equine Veterinary Science. 2012; 32: 252-255.
この改良型の飼い桶は(Pre-Vent Feeder)、底面に八つのカップ状の窪みが設置されており、それぞれのカップは馬の口唇がピッタリ入るぐらいの大きさ(直径12.7cm、深さ8.9cm)であるため、馬が少量ずつしか飼料を食べられない構造になっています。今回の研究では、九頭の実験馬を用いて、一定量の飼料を食べ終えるまでの時間を計測した結果、馬が飼料を完食するのに要した平均時間は31分で、通常の飼い桶(バケツ型またはタライ型)において完食するのに要した平均時間(19分)よりも有意に長かった事が示されました。さらに、カップ状の窪みによって、馬が口にほお張る量が少ないため、床にこぼれてしまう飼料は3%にとどまり、通常の飼い桶においてこぼれる飼料量(7~10%)よりも有意に少なかった事が報告されています。
このため、この改良型の飼い桶を使って給餌することで、馬が早食いする度合いを減退して、大結腸便秘(Large colon impaction)や食道閉塞(Esophageal obstruction)などを予防できる可能性がある、という考察がなされています。また、馬が飼い桶の外にこぼれた飼料を食べる割合が低くなることで、砂や寄生虫卵を誤って飲み込んでしまう危険性が少なくなり、結果的に、砂疝(Sand colic)や寄生虫感染(Parasite infection)に起因する疝痛を予防する効能も期待できる、という利点も指摘されています。しかし、摂食時間の変化(19分→31分)は必ずしも顕著な伸びではないため、今後は、よりサンプル数を増やした臨床試験によって、本当に疝痛の発症率(Colic incidence)が有意に減退するのか否かを調査する必要があると考えられました。
この飼い桶の構造は、興味深いアイデアだとは思いますが、通常の飼い桶よりも高価ですし、凸凹した底面を洗う際の手間も馬鹿にならないので、実際の疝痛の予防効果については、更なる科学的な検証を要するのかもしれません。
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