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オス馬とメス馬の産み分け?

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近い将来には、オス馬とメス馬の産み分けが出来るようになるのかもしれません。

カナダの獣医繁殖サービスの企業は、“性別分別された種牡馬の精液”(Sex-sorted stallion semen)を提供するための研究を進めており(下記リンクの文献)、このシステムでは、高速流動細胞計測法(High-speed flow cytometry)を用いることで、X染色体を持つ精子とY染色体を持つ精子を、90~95%の精度で分別することが可能になります。つまり、もしオスの子馬が欲しい場合には(利点:競走能力が高い、引退後に種牡馬として飼養できる)、Y染色体を持つ精子(=オスの子馬が生まれる)だけを抽出して、これを人工授精または受精卵移植として繁殖に用いる、という方針が有効になります。

技術的な問題点としては、(1)精子分別に長時間を要するため、繁殖に使える精子は二千万~四千万に留まる事から(通常の人工授精よりも少ない精子数)、種付け成功率を上げるためには、子宮角に達する深部人工授精の手法を要すること、および、(2)分別の過程で精子生存能が低下するため、凍結精液ではなく、採取直後の新鮮な精液を要すること、等が上げられています。しかし、最も大きな問題点は、生まれてくる命の性別を、人為的に操作をしようとする行為そのものであり、実際に臨床応用する場合には、倫理的に解決するべき課題が多いと考えられます。

もともと、馬の繁殖の分野では、競走能力や競技能力を向上させる事を第一目的として、特定の種牡馬の子馬を量産していく過程で、怪我をしやすい遺伝子が強くなってきている(例:骨密度が低く、遠位肢が軽い馬ほど能力は高いが、結果的に骨も折れやすい、etc)という指摘もあります。確かに、レースでの勝利を求められる競馬産業の中では、そのような基本方針は変えられませんが、動物の福祉(Animal welfare)を損なわない範囲で人間が動物を利用していくためには、出来る限りにおいて、自然の摂理に逆らわない繁殖方法を追求していく義務があるのではないでしょうか。

Copyright (C) nairegift.com/freephoto/, freedigitalphotos.net/, ashinari.com/ All Rights Reserved.

関連リンク:
Samper JC, Morris L, Plough TA. The Use of Sex-Sorted Stallion Semen in Embryo Transfer Programs. Journal of Equine Veterinary Science. 2012; 32(7): 387-389.




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このエントリーのタグ: 繁殖学 飼養管理 サイエンス 動物学 先端医療

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