鞍ズレと跛行の関係
馬の飼養管理 - 2015年08月09日 (日)

馬の鞍ズレ(Saddle slip)と後肢跛行(Hind-limb lameness)の関係が調査されています。
英国馬獣医協会の学術集会(British Equine Veterinary Association Congress)における研究報告では、様々な歩様状態にある128頭の馬に、それぞれ二人以上の騎手が乗って、その際の跛行グレードと鞍ズレの度合いが評価されました。その結果、「一貫した鞍ズレ」(Consistent saddle slip)の症状を呈した馬の割合は、後肢跛行の馬では54%に上ったのに対して、前肢跛行の馬では4%に留まり、また、正常歩様の馬や、背部痛(Back pain)および仙腸関節痛(Sacroiliac joint pain)の罹患馬では0%でした。そして、鞍ズレを示した後肢跛行の馬に、診断麻酔(Diagnostic anesthesia)を施して、跛行の原因箇所を無痛化(Analgesia)したところ、97%の馬が鞍ズレを示さなくなりました。
このため、馬に生じる鞍ズレは、後肢における軽度跛行(Mild lameness)および不症候性の運動器疾患(Subclinical musculoskeletal disorders)に関係している場合が多いことが示唆されました。そして、頻繁に鞍ズレを起こす馬に遭遇した馬主やトレーナーは、単に鞍装着の不具合(Ill-fitting saddle)や、馬の背中の不対称性(Asymmetric shape of the horse’s back)などが原因であると片づけてしまう事無く、その馬の後肢に、極めて僅かな跛行(Fairly subtle lameness)や、探知困難な歩様異常(Gait abnormalities that are difficult to detect)を生じている可能性を考慮して、慎重な跛行検査を行う必要がある、という警鐘が鳴らされています。
一般的に、後肢跛行は前肢跛行よりも診断が難しいケースが多いので、“鞍がよくズレる”と言った些細な兆候を見逃さず、疼痛の早期発見や早期治療に努めることの重要性を、再確認させる研究結果であると言えそうです。
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関連リンク:
Link between saddle slip and lameness found. HorseTalk.co.nz. Oct 4th, 2012.