馬は親密な乗り手を信頼する
馬の飼養管理 - 2015年08月09日 (日)

馬はやはり、普段から慣れ親しんだ、親密な乗り手を信頼しているようです。
今年七月に英国で開催された、馬術科学国際協会(International Society of Equitation Science)の学術集会で発表された研究では、馬が親密な乗り手(Familiar rider)を信頼するのか否かが検討されています。この研究では、普段から一人の乗り手だけが騎乗している私有馬や警察馬、および、普段から複数の乗り手が騎乗している乗馬クラブの所有馬を用いて、普段の騎乗者または初めての騎乗者が乗った状態で、アリーナに置かれた見慣れない障害物を飛越させる実験が行われました。
その結果、私有馬や警察馬では、初めての騎乗者が乗った時よりも、普段の騎乗者が乗った時のほうが、障害物を嫌がるようなネガティブな行動(Negative behavior)が少なかったのに対して、乗馬クラブの所有馬では、初めての騎乗者と普段の騎乗者のあいだで、ネガティブな行動の度合いに有意差はありませんでした。このため、普段から一人の騎乗者に乗られて、慣れ親しんでいる私有馬&警察馬においては、その親密な騎乗者に対する信頼度が高く、見慣れない障害物に対しても、あまり臆することなく接近および飛越していた、という考察がなされています。
この研究では、見慣れない障害物に向かっていく過程で、騎乗者の心拍数(Heart rate)が高いほど、馬の心拍数も高い傾向にありました。さらに、私有馬や警察馬においては、初めての騎乗者が乗った時よりも、普段の騎乗者が乗った時のほうが、この傾向が特に顕著に見られるというデータが示されました。このため、普段から一人の親密な騎乗者に乗られている私有馬&警察馬は、馬と乗り手のあいだにおける精神的なつながり(Psychological connection)が構築されており、乗り手と馬の精神状態が同調(Synchronization of mental status)する傾向にあった、という考察がなされています。
馬は人間と一緒に畑を耕し、人間と一緒に狩りに出掛け、人間と一緒に戦場で戦った唯一の動物であり、「人類最大の友」は犬ではなく馬であると思っています。そして、馬という生き物が、普段から慣れ親しんだ一人の騎乗者と、心の信頼関係を構築できる生き物であるという事は、人間同士の友情や信頼度に通ずるものがある、という見方ができるのではないでしょうか。
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関連リンク:
[1] International Society of Equitation Science (ISES). Homepages.
[2] Christa Lest Lasserre. Study: Horses Could have Greater Trust in Familiar Riders. The Horse News. November 9th, 2012. Article #30843.