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賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ

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文献を読むことの大切さを再認識させてくれた言葉です。

『賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ』というのは、ドイツの政治家ビスマルクの言葉で、「愚者は自分の成功や失敗からしか学べないのに対し、賢者は他人の成功や失敗からも学べる」という意味で、多くの先人や同業者の体験に積極的に耳を傾けることの重要性を述べた名言だと思います。

獣医学分野においても、豊富な臨床経験を積み重ねることは確かに大切ですが、一人の獣医師が得られる経験は、世界中の成功者の知恵に比べれば、ほんの僅かな知識にしか過ぎません。自分が直接目にする症例のみを教本にしていては、得られる知識は偏向しがちで量も限られてしまう、という謙虚さを忘れてはいけないのではないかと思います。

例えば、馬の獣医師の「臨床経験」を考えた場合にも、診療に携わる分野や地域(競走馬、乗用馬、繁殖馬)によって、目にする疾患は大きく偏りがあるため、発症率の低い病気に遭遇した際には、診断が普段よく見る疾患へと偏向しがちになります。また、ある病気に対する一つの治療法が奏功したように見えれば、次に巡り合う症例に対しても同じ療法を選択しがちですし、治療効果があるという思い込みから、その効能の判断を誤る危険も高いと言えます。これらは全て、「経験」というものを尊重し過ぎることによる落とし穴であると言えるのではないでしょうか。

獣医雑誌を読んでいると、「こんな病気、一生目にすることはないな」と思って、つい読み飛ばしたくなる症例報告や研究論文もあります。しかし、文献を読むことの利点は、発症率が低く稀にしか目にしない疾患の知識を得られることだけでなく、数十頭の症例に対する治療効果に対して回顧的分析(Retrospective analysis)を行っているため、治療法の良し悪しを客観的に見極めることが出来ることではないかと思います。また、様々な地域からの獣医さん達が集まる症例検討会では、他人の失敗例を学ぶことが出来るので(誌上には治療失敗の症例報告はあまり多くないため)、自分が起こすかもしれなかった失敗を未然に予測&予防することが可能な場合もあります。

やはり良い獣医師になるためには、(1)症例報告などの文献から他人の成功を学ぶこと、(2)同業者が集う症例検討会などから他人の失敗を学ぶこと、この両方を忘れてはいけないのではないかと思います。

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