本間先生の言葉
未分類 - 2015年08月13日 (木)

私の大好きな手塚治虫さんの漫画・ブラックジャックの一場面では、患者を助けられなかったブラックジャックを、天国にいる恩師の本間先生が、「人間が生きものの生き死にを自由にしようなんて、おこがましいとは思わんかね」と慰めるシーンがあります。
漫画家だけでなく、医学博士でもあった手塚治虫さんの作品の中には、このメッセージが随所に読み取れ、ブラックジャックの最終回・『人生という名のSL』の中にも、夢の中に現れた本間先生が、ブラックジャックを以下のように厳しく諌める場面があります。
「これだけは君も肝に銘じておきたまえ。
医者は人を治すんじゃない。
人を治す手伝いをするだけだ。
治すのは本人なんだ。 本人の気力なんだぞ!
医者が人の生き死にの鍵を握るなんて、
思いあがりも甚だしいんじゃないか?」
私も以前、診療していた疝痛馬が予後不良で安楽死となり落ち込んでいたときに、あるアメリカ人の馬獣医の教授の先生から、「私達の仕事は馬の命を救うことではなく、生存しようとしている馬を手助けすることだけなんだ」(Our job is not to save horses’ lives, but to simply help surviving horses.)と言われたのを覚えています。
獣医臨床の現場では、全力を尽くしても助けられない症例がある反面、殆ど見込みが無いと思っていた患馬が、ケロッと治って退院していくこともあります。獣医学がどんなに進歩しても、結局、動物の生き死にには、人間には理解できない自然の摂理が働いている場合も多い、という謙虚な考え方を忘れてはいけないのかもしれません。
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