馬の病気:膀胱結石症
馬の泌尿器病 - 2015年08月15日 (土)

膀胱結石症(Cystolithiasis)について。
膀胱結石は、最も多く見られる馬の尿路結石症(Urolithiasis)の病態で、無虚勢の雄馬(Intact male)において発症が多い事が知られています。馬における膀胱結石(Cystic calculi)は、通常は単一で、カルシウム炭酸塩結晶(Calcium carbonate crystals)が最も多く見られますが、カルシウムリン酸塩結晶(Calcium phosphate crystals)の組成を示す症例もあります。また、膀胱麻痺(Cystoplegia)に起因して発生する尿結晶の蓄積(砂状尿道結石症:Sabulous urolithiasis)も、膀胱結石症の一形態として知られています。
膀胱結石症の症状としては、運動後の血尿(Hematuria after exercise)が最もよく見られ、頻尿症(Pollakiuria)や尿路失調(Urinary incontinence)を呈する場合もあります。膀胱結石が疑われる症例では、直腸検査(Rectal examination)による結石の触診が試みられ、カテーテルによって膀胱を空にすることで結石の発見が容易となる事もあります。また、直腸壁を介しての超音波検査(Transrectal ultrasonography)によって尿管(Ureters)や尿道(Urethra)における結石の存在を確かめることが大切です。膀胱結石症は膀胱内視鏡検査(Cystoscopic examination)によって確定診断が下され、尿道炎(Urethritis)や膀胱炎(Cystitis)の重篤度の判定が行われます。膀胱結石の羅患馬では、慢性腎不全(Chronic renal failure)や尿路感染症(Urinary tract infection)を併発している場合もあるため、血液検査、尿検査(Urinalysis)、定量的な尿の細菌培養(Quantitative urine culture)などが実施されます。
膀胱結石症の治療としては、結石の外科的切除(Surgical removal)と術後抗生物質療法(Post-operative anti-microbial therapy)が行われます。術式としては、正中開腹術(Midline celiotomy)および傍直腸アプローチ(Pararectal approach:いわゆるGokel's operation)を介しての膀胱切開術(Cystotomy)によって結石摘出する手法や、電気水圧砕石機(Electrohydraulic lithotripsy devices)による結石破砕後の会陰尿道切開術(Perineal urethrotomy)を介して破片摘出する手法が報告されています。また、牝馬症例においては、硬膜外麻酔(Epiduralanesthesia)に併行しての尿道括約筋切開術(Urethral sphincterotomy)による結石摘出が試みられる場合もあります。砂状尿道結石症の羅患馬においては、尿道カテーテルを用いて結晶洗浄(Crystal lavage)が施されますが、原発疾患である膀胱麻痺の経過によっては予後不良を示す場合もあります。
外科的治療の後に膀胱結石症を生じる症例は約四割で、膀胱切開術よりも会陰尿道切開術による再発率(Recurrence rate)が高いことから、小破片の不完全な除去(Incomplete removal)が病態再発に関与している可能性が示唆されています。膀胱結石の再発予防のため、アルファルファ乾草から牧草(Grass hay)への変更、マメ科乾草(Legume hay)の給餌中止、塩化アンモニウム(Ammonium chloride)や硫酸アンモニウム(Ammonium sulfate)の経口投与による尿酸性化(Urinary acidification)が有効である可能性が示唆されています。しかし、これらのアンモニウム塩は味が悪く(Unpalatable)、飼料添加が難しく、毎日2~3回の手動経口投与を要するため、より実用的な手法として、飼料への塩分添加量を増すことで、水分消費量を増加(Increased water consumption)させて、尿のpHを減少させる手法が選択される場合もあります。
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