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馬の病気:膀胱破裂

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膀胱破裂(Bladder rupture)について。

馬の膀胱破裂は、幼馬における先天性欠損(Congenital defect)、または、出産時の腹腔圧迫(Abdominal compression at parturition)に起因して頻発しますが、稀に成馬においても尿道閉塞(Urethral obstruction)や分娩(Foaling)によって起こる場合もあります。幼馬の膀胱破裂では、連続的に排尿姿勢を取る仕草(Repeated posturing to urinate)が見られ、腹腔への尿蓄積(Urine accumulation in the abdomen)に伴って沈鬱(Depression)、腹部膨満(Abdominal distention)、異常な体重増加(24時間当たり2kg以上の増加)を呈します。成馬の膀胱破裂では、沈鬱や食欲不振(Anorexia)の症状を示しますが、腹部膨満は顕著には観察されません。

膀胱破裂の診断に際しては、臨床所見の観察に加えて、血液検査では、低ナトリウム血症(Hyponatremia)、低クロール血症(Hypochloremia)、高カリウム血症(Hyperkalemia)、腎後性高窒素血症(Postrenal azotemia)などが認められます。腹壁を介しての超音波検査(Transabdominal ultrasonography)では、大量の腹水貯留(Excessive peritoneal fluid)が観察され、腹水のクレアチニン濃度と血清クレアチニン濃度の比が2:1以上である所見や、腹水の低比重(Low specific gravity: <1.008)、腹水中のカルシウム炭酸塩結晶(Calcium carbonate crystals)を確認することで、腹尿症(Uropeitoneum)の確定診断が下されます。幼馬において、腹腔の尿蓄積が起きる前の初期病態の膀胱破裂では、胎便の便秘症(Meconium impaction)による裏急後重(Tenesmus)の仕草との鑑別が困難な症例もあるため、膀胱造影術(Cystogram)によって膀胱破裂の確認や、尿膜管漏出(Urachal leakage)との鑑別診断が試みられる場合もあります。成馬においては、膀胱内視鏡検査(Cystoscopy)によって、膀胱破裂の発症部位とサイズの特定が行われます。

膀胱破裂の治療では、破裂部位が小さい症例では、膀胱留置管(Bladder indwelling tube)の設置によって膀胱が空っぽである状態を継続することで、二次性治癒(Secondary wound healing)による閉鎖が期待できる場合もあります。破裂部位が大きい症例では、膀胱の外科的縫合を要しますが、術前に補液療法(Fluid therapy)によって水和状態(Hydration status)、電解質欠損(Electrolyte deficits)、酸塩基平衡(Acid-base balance)などの改善を行うことが重要です。

幼馬およびオスの成馬の症例では、全身麻酔下(Under general anesthesia)での背臥位(Dorsal recumbency)による施術が必要で、正中開腹術(Midline celiotomy:雌馬の場合)もしくは傍正中開腹術(Paramidline celiotomy;雄馬の場合)によって膀胱を術創から反転および露出させ、破裂部位の辺縁を切除(Wound margin resection)した後、二層内反連続縫合(Double-layer continuous inverting suture patterns: Cushing, Lembert, etc)によって膀胱を閉鎖します。メスの成馬の症例では、起立位手術(Standing surgery)によって、子宮頚部から5~10cmの位置に設けた膣壁切開創(Vaginal wall incision)から膣内へ膀胱を逸脱(Bladder prolapsed)させて縫合する手法や、尿道括約筋切開術(Urethral sphincterotomy)によって、膀胱粘膜面(Bladder mucosal surface)を外陰口から外部へ反転させて縫合する手法が一般的です。術後には、腹膜炎(Peritonitis)の予防のため、全身性の抗生物質療法(Systemic anti-microbial therapy)が実施され、特に幼馬の尿膜管漏出の症例においては腹膜炎の発症率が高いことが報告されています。

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