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馬の病気:陰茎損傷

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陰茎損傷(Penile injury)について。

陰茎の損傷は、交配時の蹴傷に起因することが一般的ですが、人工授精のための精液採取時の事故として発症することもあります。また、アルファアドレナリン遮断薬(Alpha-adrenergic blocking drugs)の投与に起因して発生する病態(Priapism)も知られています。

陰茎損傷の臨床症状としては、皮膚擦過創(Skin abrasion)、裂傷(Laceration)、出血(Hemorrhage)、血腫(Hematoma)などを呈し、包皮浮腫(Prepuce edema)によって陰茎縮退が不可能となる場合(Inability to retract penis: Paraphimosis)もあります。遷延性の陰茎逸脱(Prolonged penile prolapse)を示した症例では、陰茎麻痺(Penile paralysis)、亀頭包皮炎 (Balanoposthitis)、尿道炎(Urethritis)などを続発します。

陰茎損傷の治療では、全身性の非ステロイド系抗炎症剤(Non-steroidal anti-inflammatory drugs)の投与や冷水療法(Cold hydrotherapy)に併行して、包皮縫合を行うことで陰茎逸脱を防いだり、バンテージと補助帯装着によって陰茎支持を施す手法が有効で、損傷部の完治までは、交配を休止することが必要です。慢性の難治性陰茎逸脱(Chronic refractory penile prolapse)を呈し、保存性療法での治癒が期待できないと判断された症例では、陰茎切断術(Penile amputation)を要することもあります。この際には、超音波検査(Ultrasonography)を介して海綿体(Corpus Cavernosum Penis)の繊維化症(Fibrosis)を検知して、陰茎縮退機能の回復が可能であるかを評価することで、的確な予後判定に努めることが重要です。

アルファアドレナリン遮断薬に起因する陰茎逸脱の症例に対しては、発症後の2~4時間以内であれば、ベンズトロピンメシル酸塩(Benzotropine mesylate)の全身投与、局所への軟化薬塗布(Topical emollients application)、海綿体内部へのPhenylephrine浸潤による陰茎減退(Penile detumescence)等が試みられる場合もあります。しかし、経過が12~24時間に及ぶ症例では、海綿体内への乳酸リンゲル注入を介して、凝固血液(Sludged blood)の除去を行うことが推奨されています。

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名前: 石原章和
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