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馬の病気:臍帯捻転

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臍帯捻転(Umbilical cord torsion)について。

臍帯が縦軸方向に捻れたり(Longitudinal twisting)、胎児の肢や腹部に巻き付いて絞扼(Strangulation)を起こすことで流産(Abortion)に至る疾患で、胎児に関わる入院症例の約6%を占めることが報告されています。反芻類と異なり、馬の胎児は尿膜液(Allantoic fluid)の内部において、堅固に固定されることなく浮遊しているため、羊膜腔内での胎児回転(Fetal rotation within the allantoic cavity)や、尿膜液内での羊膜嚢の回転(Amniotic sac rotation within the allantoic fluid)によって、臍帯の過剰捻転を発症すると考えられています。

臍帯捻転の症状としては、母馬の全身性症状(Systemic signs of mare)を示すことなく、急性発現性(Acute onset)の流産を呈することが一般的で、妊娠期間中の五~十ヶ月に好発することが報告されています(平均発症齢は七ヵ月半)。正常馬の臍帯の長さが平均55cmであるのに対して、臍帯捻転の罹患馬では臍帯の長さが62~125cm(平均96cm)であることが報告されていますが、病因論との関係は定かではありません。

臍帯捻転の診断では、経直腸超音波検査(Transrectal ultrasonography)において、臍帯の捻転様外観が確認されますが、僅かな臍帯の捻じれは正常な胎児においても見られるため、臍帯内の浮腫(Edema)や血栓(Thrombosis)、液体貯留を起こした囊形成(Fluid-filled sacculation formation)などの他の異常所見の有無を確かめることが重要です。経腹壁超音波検査(Transabdominal ultrasonography)では、胎児の心拍数増加(Increased heart rate)や、膀胱の拡張(Urinary bladder dilation)などが見られる場合もあります。

臍帯捻転に対する有効な外科的治療法は報告されておらず、また、胎児組織への不可逆的損傷(Irreversible damage)が生じる前の初期病態を、超音波検査のみで発見するのは困難である場合が多いことから、妊娠末期の患馬において子宮切開術(Hysterotomy)による胎児の救出が可能である症例は殆ど見られません。臍帯捻転は偶発的疾患(Incidental disorder)である事が示唆されており、その後の繁殖飼養において臍帯の捻転を再発する危険が高まる可能性は無いと考えられています。

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