馬の病気:子宮内膜嚢胞
馬の生殖器病 - 2015年08月22日 (土)

子宮内膜嚢胞(Endometrial cyst)について。
子宮内膜(Endometrium)における嚢胞形成は、11歳齢以上の高齢牝馬に好発することが知られており、子宮内膜腺(Endometrial gland)やリンパ管閉塞(Lymphatic obstruction)に起因すると考えられています。
子宮内膜嚢胞は、経直腸超音波検査(Transrectal ultrasonography)もしくは子宮鏡検査(Hysteroscopy)によって確認され、最大では内径が数cmに達することから胚芽小胞(Embryonic vesicle)との見分けが難しく、双胎妊娠(Twin pregnancy)の診断の際に妨げとなる場合があります。この際には、交配前の超音波検査で子宮内膜嚢胞の位置やサイズを記録しておく事が重要で、また、数日後の再検査でもサイズが変化しない所見で、胚芽小胞との鑑別が試みられます(胚芽小胞は毎日4mmの成長)。
子宮内膜嚢胞は、基本的には妊娠機能には悪影響を与えないと考えられていますが、嚢胞のサイズが大きい場合には、胚体死(Embryonic death)や流産(Abortion)の原因となりうる可能性も示唆されています。このため、子宮内膜嚢胞の外科的除去が選択された症例においては、子宮鏡検査を介してのレーザー焼烙(Laser abrasion)によって、嚢胞の退縮が行われます。
また、超音波誘導による経膣針吸引(Ultrasound-guided transveginal needle aspiration)、経直腸手動破砕(Transrectal manual rupture)、高張食塩水の子宮内注入(Intrauterine infusion of hypertonic saline)等によって嚢胞退縮が試みられる場合もありますが、これらの手法では嚢胞再発(Cyst recurrence)を呈する症例が多いことが報告されています。
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