馬の病気:小腸捻転
馬の消化器病 - 2013年04月16日 (火)

小腸捻転(Small intestinal volvulus)について。
小腸の捻転は、腸間膜軸に沿って小腸がねじれる状態(Twist along mesentery axis)を指し、遠位空腸~結腸(Distal jejunum and ileum)に好発して、腸管の通過障害(Intestinal obstruction)および絞扼(Strangulation)を引き起こす疾患です。この際、結腸と空腸が360度以上に捻転することで嚢形成(Pouch formation)して、その中に他の箇所の空腸が捕捉した病態を“巻貝状捻転”(Volvulus nodosus)と呼びます。小腸捻転の病因としては、局所的な腸蠕動の変化(Change in local peristalsis)が挙げられており、子馬に好発する傾向が見られることから、泌乳期から普通飼料への変化も発症素因(Predisposing factor)となると考えられています。
小腸捻転の症状としては、急性発現性(Acute onset)の重度疝痛(Severe colic)や、腹腔膨満(Abdominal distension)が認められ、捻転を生じた部位の小腸が虚血および壊死(Ischemia and necrosis of entrapped intestine)を起こし、それに伴う腹膜炎(Peritonitis)や内毒素血症(Endotoxemia)を続発した症例においては、高体温(Hyperthermia)や毛細血管再充満時間の遅延(Prolonged capillary refilling time)などの症状が見られます。また、病状の進行に伴って、経鼻カテーテルによる中程度~重度の胃逆流液(Moderate to severe nasogastric reflux)の排出を示しますが、胃除圧(Gastric decompression)を行っても疼痛症状が改善しない所見で、十二指腸近位空腸炎(Duodenitis-proximal jejunitis)との鑑別が可能な場合もあります。
小腸捻転の診断では、直腸検査(Rectal palpation)によって膨張した小腸を触知したり(成馬の場合)、腹腔レントゲン検査(Abdominal radiography)によってガス性膨満を呈した消化管を確認(子馬の場合)することで推定診断(Presumptive diagnosis)が下されますが、小腸絞扼を起こす他の疾患との鑑別は、開腹手術(Celiotomy)によってのみ下される場合が殆どです。腹腔超音波検査(Abdominal ultrasonography)では、内径拡張(Increased luminal diameter)を呈する複数の腸管が観察され、腹水検査(Abdominocentesis)では、蛋白濃度の上昇と白血球数の増加が見られます。
小腸捻転の治療においては、内科的療法では制御不能な疼痛症状(Uncontrollable pain)を示すことが殆どであるため、正中開腹術(Midline celiotomy)による捻転部位の整復と、壊死を起こした小腸の切除&吻合術(Small intestinal resection and anastomosis)が行われます。巻貝状捻転の整復は、手技的に困難な場合もありますが、捕捉されている小腸の内容物を、マッサージしながら近位側の腸管へと押し流すことで、捕捉部位を遊離させるようにします。小腸捻転の予後は中程度~良好(Moderate to good prognosis)ですが、重篤な腹膜炎や内毒素血症を併発したり、広範囲にわたる小腸壊死を起こした症例では(小腸全長の50%以上が罹患した場合)、顕著に予後が悪化することが報告されています。
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