fc2ブログ
RSS

馬の病気:ショクヒヒゼンダニ症

20131014_Blog2_Chorioptic_Mange_Pict1.jpg

ショクヒヒゼンダニ症(Chorioptic mange)について。

馬ショクヒヒゼンダニ(Chorioptes equi)の感染に伴って皮膚炎を起こす疾患で、馬のダニ症の中では最も多く見られる病原体です。冬季に好発することが知られており、特に重種馬(Draft horse)における発症率が高いことが報告されています。ショクヒヒゼンダニ症の病変は、通常は繋部~球節(Pastern to fetlock regions)に多く見られ、掻痒症(Pruritus)を伴う痂皮形成(Crust formation)、丘疹(Papules)、紅斑(Erythema)、鱗屑(Scaling)、潰瘍性皮膚炎(Ulcerative dermatitis)等を呈します。

ショクヒヒゼンダニ症の診断は、皮膚掻爬検体(Skin scraping sample)の直接鏡検によって虫体を発見することで下されます。また、皮膚生検(Skin biopsy)では、血管周囲および間質性皮膚炎(Perivascular to interstitial dermatitis)、好酸球性表皮性微細膿瘍(Eosinophilic epidermal micro-abscess)、限局性表皮壊死(Focal epidermal necrosis)などが認められ、類似疾患である昆虫過敏症(Insect hypersensitivity)や繋皹(Pastern dermatitis, Grease, Scratch)との鑑別診断を行います。

ショクヒヒゼンダニ症の治療では、罹患部位の剃毛(Clipping)と硫化セレンシャンプー(Selenium sulfide shampoo)による洗浄と消毒、および、Moxidectinの経口投与が有効です。また、Crotoxyphos、Malathion、Methoxychlor、Coumaphos、Lime sulfur等の殺虫剤の局所塗布(Topical application of insecticides)や、Fipronil製剤のスプレー塗布が併用される場合もあります。Ivermectinによる全身療法は、通常の抗寄生虫濃度よりも高濃度での投与が必要で、皮膚炎症状の完治には至らない症例も多いことが報告されています。

馬において皮膚炎の原因となる他のダニ病原体としては、キュウセンヒゼンダニ(Psoroptic mange)、疥癬虫(Sarcoptic mange)、毛包虫(Demodectic mange)などが挙げられています。

キュウセンヒゼンダニは、たてがみ、尾根、耳、下顎間などにおいて、掻痒症を伴う、痂皮、丘疹、脱毛(Alopecia)などの病変を生じ、掻爬検体の直接鏡検によって診断が下されます。キュウセンヒゼンダニ症の治療では、殺虫剤の局所塗布に併せて、Ivermectin、Doramectin、Moxidectin等の投与が行われます。

疥癬虫は、頭部や頚部などにおいて、掻痒症を伴う、痂皮、丘疹、脱毛などの病変を生じますが、感染虫体が少ない症例が多いことから、掻爬検体の直接鏡検によって病原体の発見が困難な場合もあります。疥癬虫症の治療では、殺虫剤の局所塗布に併せて、Ivermectinの投与が行われます。

毛包虫は、頚部や臀部などにおいて、掻痒症を伴う痂皮や脱毛を生じ、掻爬検体や浸出液(Exudates)の直接鏡検によって診断が下されます。毛包虫症の治療では、Ivermectinの投与が試みられますが、他の動物種に用いられるAmitrazスプレー塗布は、馬においては副作用の危険が高いため使用禁忌とされています。

Copyright (C) Akikazu Ishihara All Rights Reserved.




関連記事

プロフィール

Rowdy Pony

Author:Rowdy Pony
名前: 石原章和
性別: 男性
年齢: アラフィフ
住所: 北関東
職業: 獣医師・獣医学博士
叩けよ、さらば開かれん!

質問、御意見、記事の要望等は下記まで
E-mail: rowdyponies@gmail.com

最新記事

ブログメニュー

馬の話題カテゴリー

馬の病気の話題
・蹄葉炎, 切腱術
・ナビキュラー症候群
・蹄病一般, 装蹄
・腱靭帯疾患
・背部/腰部/仙腸部疾患
・プアパフォーマンス
・消化器疾患一般
・胃潰瘍
・虚血再灌流障害
・呼吸器の医療
・神経疾患, 神経学検査
・クッシング病
・繁殖疾患と繁殖学
・皮膚病の医療
・眼科疾患, 眼科治療
・歯科疾患, 歯科治療
・寄生虫病
・高齢馬の医療
・子馬の病気や管理法
・子馬/若齢馬の長期的影響
・突然死
・症例シリーズ

馬の医療の話題
・疝痛の検査
・経鼻チューブ
・腹水検査
・疝痛の予防
・疝痛の手術判断と予後予測
・開腹術の手技や合併症
・疝痛の外科的処置
・疝痛の獣医療での地域差
・跛行検査, 画像診断
・関節鏡
・去勢, 泌尿生殖器
・抗生物質
・局所肢灌流
・COX-2限定阻害薬
・破骨細胞抑制剤
・ショックウェーブ
・パーグ治療
・馬のハンドリング, 投薬
・バイオマーカー
・麻酔
・整形外科
・キャスト, ピンキャスト
・再生医療
・先端医療
・良い死(Euthanasia)
・馬の獣医療一般

馬の一般的話題
・馬の飼養管理一般
・飼養管理での病気/怪我の予防
・馬学一般
・ウマ社会の話題
・獣医学一般, 日常
・馬の飼料
・跛行と運動
・調馬索
・サク癖
・馬の行動学や悪癖
・ハミや馬具
・輸送
・怪我や事故の予防,対処法
・ホースマンの怪我と事故
・競馬での事故死や骨折
・馬とヒト, 伝染病, 馬動物学

馬の診療シリーズ

サイト内タグ一覧

FC2カウンター

リンク

カレンダー

03 | 2024/04 | 05
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 - - - -

推薦図書

月別アーカイブ

お断わり

20130414_Blog_Message_Pict1.jpg
このサイトに掲載されているイラスト、画像、文章は、すべて管理主自身が作成したもの、もしくは、著作権フリーの素材リンクから転載したものです。

カテゴリ

全記事表示リンク

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
学問・文化・芸術
21位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
自然科学
2位
アクセスランキングを見る>>

FC2ブログランキング

天気予報


-天気予報コム- -FC2-

検索フォーム

QRコード

QR