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馬の病気:小腸重積

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小腸重積(Small intestinal intussusception)について。

小腸が小腸の中に入り込んでしまう疾患で、内側の腸を嵌入部(Intussusceptum)、外側の腸を外鞘部(Intussuscipiens)と呼びます。三歳以下の若馬に好発し、給餌内容の変化(ding change)、条虫(Tapeworm)の寄生、腸内異物(Intraluminal foreign body)、腸壁ポリープなどによって、隣接する腸と腸のあいだで運動性に差異が生じることで発症すると考えられています。

小腸重積の症状としては、回腸回腸重積(Ileal-ileal intussusception)では比較的短い腸を巻き込み、不完全閉塞(Incomplete obstruction)を呈するため、持続的な軽度疝痛(Prolonged mild colic)を示すことが一般的です。一方、空腸空腸重積(Jejunal-jejunal intussusception)もしくは回腸盲腸重積(Ileocecal intussusception)では長い腸を巻き込み、完全閉塞(Complete obstruction)を起こし易いことから、多くの症例において急性発現性の重度疝痛(Acute onset of severe colic)が認められ、頻脈(Tachycardia)、頻呼吸(Tachypnea)、脱水(Dehydration)等の臨床症状が見られます。また、嵌入部の腸管が虚血性壊死(Ischemic necrosis)を起こし、内毒素血症(Endotoxemia)を続発した場合には、高体温(Hyperthermia)や毛細血管再充満時間の遅延(Prolonged capillary refilling time)等が示されます。

小腸重積の診断では、経鼻カテーテルによる中程度~重度の胃逆流液(Moderate to marked gastric reflux)の排出が見られますが、空腸空腸重積と回腸盲腸重積の症例では、胃除圧(Gastric decompression)によっても疼痛症状が改善しない所見で、類似疾患である十二指腸近位空腸炎(Duodenitis-proximal jejunitis)との鑑別診断が試みられます。直腸検査(Rectal examination)では、小腸膨満(Small intestinal distension)と腸壁浮腫(Intestinal wall edema)が触知され、慎重な触診によって約半数の症例において小腸重積部位が硬化筒状腫瘤(Firm tube-like mass)として確認できることが報告されています。腹腔超音波検査(Abdominal ultrasonography)では、小腸膨満に伴う内径拡張(Increased luminal diameter)と小腸壁の肥厚(Small intestinal wall thickening)が認められ、小腸重積部位が見つかった場合には、特徴的な“牛目”像(Bullseye appearance)または“的”状像(Target appearance)として観察されます。小腸重積の羅患部位は外鞘内に閉鎖されているため、腹水検査(Abdominocentesis)による蛋白濃度上昇や白血球数増加の所見は、必ずしも顕著でないことが報告されています。

小腸重積の治療では、内科的療法による重積部の自然整復(Spontaneous resolution)は殆ど期待できず、鎮静剤(Sedations)の投与によっても制御困難な重度の疝痛症状が継続する症例が殆どです。空腸空腸重積に対する外科的療法では、正中開腹術(Midline celiotomy)によって、小腸重積部の切除&吻合術(Intestinal resection and anastomosis)が実施されます。一方、回腸盲腸重積および回腸回腸重積では、盲腸切開創を介しての回腸盲腸瘻造設(Jejunocecostomy)が応用されることが一般的です。しかし、急性病態において、回腸壁の浮腫や出血が重篤で、切除が困難である場合には、盲腸切開術(Typhlotomy)の後に盲腸内で嵌入部を切り開き罹患箇所の腸管を引き出してから、ステープル器具を用いて盲腸内で回腸を切除する術式が応用されることもあります。

小腸重積の予後は、回腸回腸重積の病態では比較的良好ですが、完全閉塞を生じ易い空腸空腸重積および回腸盲腸重積では、虚血性壊死と内毒素血症を呈して予後不良(Poor prognosis)を示す場合が多いことが報告されています。また、慢性病態の回腸盲腸重積を呈した症例では、軽度疝痛とゆっくりとした体重増加(Slow weight gain)を示しながら、遅延性回復(Protracted recovery)の経過を示す場合もあります。

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