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馬の病気:紫外皮膚炎

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紫外皮膚炎(Photodermatitis)について。

紫外線暴露による光感作(Photosensitization)から皮膚炎を起こす疾患で、体内に取り込まれた光力学性物質(Photodynamic agents)が、光エネルギーを吸収または移行させることで細胞損傷に至ると仮説されています。光力学性物質への汚染源としては、毒性植物の摂食が最も多いと考えられており、原因植物としては、オトギリソウ(St. John's Wort)(光力学性物質:Hypericin)、ソバ (Buckwheat)(光力学性物質:Fagopyrin)、ホソムギ(Perennial ryegrass)(光力学性物質:Perloline)などが知られています。

また、肝毒性(Hepatotoxic)のあるピロリジンアルカロイドを含む植物の摂食に起因して、進行性の慢性肝炎(Chronic progressive hepatitis)を起こした症例では、飼料中のChlorophyllの分解産物であるPhylloerythrinの肝排出(Hepatic excretion)が減少し、皮膚組織内に蓄積したPhylloerythrinによる光感作を生じます。ピロリジンアルカロイドを多く含有する植物としては、ラグワート(Tansy ragwort: Senecio jacobaea)、ノボロギク(Common groundsel: Senecio vulgaris)、ワルタビラコ(Tarweed: Senecio trianularis)、セネキオ(Amsinckia: Fiddleneck)などが知られています。

紫外皮膚炎の病変は、無毛もしくは白毛部位に起こり、紅斑性(Erythematous)、腫脹(Swollen)、疼痛性(Painful)、掻痒症(Pruritus)が認められ、病状の進行に伴って壊死(Necrosis)や皮膚脱落(Sloughing)の病態を呈する事もあります。紫外皮膚炎の診断では、視診と触診によって推定診断(Presumptive diagnosis)が下されますが、放牧場の牧草や飼料中の乾草の分析による、光力学性物質やピロリジンアルカロイドの検出が有効な場合もあります。

紫外皮膚炎の治療では、罹患馬の放牧を中止し、直射日光への暴露を予防することで、1~2週間で病変の治癒が見られることが一般的です。また、コルチコステロイド療法による掻痒症の改善が試みられる症例もあります。ピロリジンアルカロイド中毒による慢性肝炎に起因する病態では、毒性植物の摂食中断後にも、予後不良を示す場合が殆どです。

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