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馬の病気:臍帯ヘルニア

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臍帯ヘルニア(Umbilical hernia)について。

臍帯腹膜欠損部に小腸が迷入する疾患で、多くの新生馬に見られますが、小腸絞扼(Small intestinal strangulation)を起こすのはその数%に過ぎないことが知られており、また、稀に膀胱が迷入(Urinary bladder migration)する症例も報告されています。臍帯ヘルニアの病因としては、出産時の臍帯損傷(Umbilical cord trauma)、臍帯の過剰捻転(Excessive straining)、臍帯感染(Umbilical cord infection)などが挙げられています。

臍帯ヘルニアの診断では、触診によってヘルニア輪(Hernia ring)の硬度、迷入小腸の整復性(Reducibility)を確認し、また、超音波検査(Ultrasonography)によって、慎重に臍帯ヘルニアと膿瘍(Abscess)の鑑別診断を下すことも重要です。小腸壁の一部のみが部分嵌頓(Partial incarceration)を起こした場合は(=リクターヘルニア)、消化管の狭索(Bowel stenosis)は起こりませんが、腸管皮膚瘻(Enterocutaneous fistula)を形成する危険があります。また、小腸の完全嵌頓(Complete incarceration)にともなって、羅患部腸管の膨満(Distension)、硬化(Consolidation)、浮腫(Edema)、圧痛(Pain on palpation)を呈した症例では、緊急手術が必要となる場合もあります。

臍帯ヘルニアの治療においては、手動整復可能(Digitally reducible)で、サイズが5cm以下の臍帯ヘルニアでは、自然閉鎖(Spontaneous closure)する場合が殆どですが、四ヶ月齢時点においてもヘルニアが残存している場合は外科的整復が必要です。ヘルニア輪のサイズが10cm以上である症例においては、自然治癒が起こらない場合が多く、また、小腸絞扼を併発する症例が多いため、保存的療法(Conservative treatment)は推奨されていません。

臍帯ヘルニアの古典的療法としては、ヘルニア鉗子(Hernia clamp)を用いての腹膜欠損部の閉鎖が試みられますが、小腸捕捉(Intestinal entrapment)を引き起こす危険があるため、実施には賛否両論(Controversy)があります。外科的療法に際しては、楕円形切開創(Elliptical incision)を介して、臍帯膿瘍に注意しながら、皮下組織を切除して患部を露出させた後、ヘルニア嚢(Hernia sac)を腹腔内へ反転させてヘルニア輪を縫合させる閉鎖性整復法(Closed technique)、もしくは、ヘルニア嚢を切除してから(ヘルニア嚢内に膿瘍がある場合には、それも同時に切除する)、ヘルニア輪を縫合する開放性整復法(Open technique)が実施されます。

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