馬の病気:慢性進行性リンパ浮腫
馬の皮膚病 - 2015年09月01日 (火)

慢性進行性リンパ浮腫(Chronic progressive lymphedema)について。
遠位肢に進行性の腫脹(Progressive swelling)、角質増殖(Hyperkeratosis)、線維化症(Fibrosis)などを生じる疾患で、シャイアー、クライズデール、ベルジアン等の重種馬に好発します。病因としては、エラスチン抗体(Anti-elastin antibodies)の発現に起因するリンパ系組織の機能異常が挙げられており、慢性リンパ浮腫(Chronic lymphedema)から免疫系異常(Compromised immune system)を起こし、二次性細菌感染(Secondary bacterial infection)に至ることが一般的です。
慢性進行性リンパ浮腫の症状としては、初期病態では皮膚の肥厚化(Skin thickening)と痂皮形成(Crusting)が認められ、容易に細菌感染と蜂窩織炎(Cellulitis)を起こすようになります。さらに症状の進行に伴って、複数の皮膚襞形成(Multiple skin fold formation)や潰瘍(Ulceration)を示し、遠位肢の永続性肥大(Permanent enlargement of lower limb)を呈します。
慢性進行性リンパ浮腫の有効な治療法は確立されておらず、四肢の蜂窩織炎と肥大化から、競走および競技への使役は困難となる症例が殆どで、また、遺伝性素因(Genetic predisposition)の関与も指摘されていることから、繁殖馬としての飼養も推奨されていません。
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