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馬の病気:鼻涙管閉鎖

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鼻涙管閉鎖(Nasolacrimal duct atresia)について。

馬の鼻涙管(Nasolacrimal duct)に最も多く生じる先天性欠損症(Congenital defect)で、無孔鼻側涙点(Imperforate nasal punctum)を生じることが一般的ですが、眼瞼側涙点閉鎖(Eyelid punctal atresia)や鼻涙管の不完全形成(Incomplete formation)などの病態を示すこともあります。

鼻涙管閉鎖の症状としては、初期病態では軽度~中程度の片側性流涙症(Mild to moderate unilateral epiphora)が見られますが、4~6ヶ月齢までには二次性細菌性涙嚢炎(Secondary bacterial dacryocystitis)に起因する、重度の粘液膿性眼脂(Severe mucopurulent ocular discharge)を示すようになります。

鼻涙管閉鎖の診断は視診によって下され、鼻前庭(Nasal vestibule)における鼻涙管開孔部の欠損を確認することで、後天性の鼻涙管閉塞(Acquired obstruction of nasolacrimal duct)との鑑別診断を行います。眼脂症状が認められた症例においては、二次性涙嚢炎の治療指針決定のため、粘液膿性浸出物を用いての細菌培養(Bacterial culture)と抗生物質感受性試験(Antibiotic susceptibility test)を実施することが重要です。また、鼻涙管無形成(Agenesis of nasolacrimal duct)を除外診断するため、造影レントゲン検査(Contrast radiography)(=鼻涙嚢造影術:Dacryocystorhinography)を行うことが推奨されています。

鼻涙管閉鎖の治療では、鼻涙管の外科的開口部形成(Surgical opening of atretic puncta)を要し、術前レントゲン検査(Pre-operative radiography)による開口部位の決定を行うことが重要です。手術では、眼瞼側涙点から挿入させたシリコン製カテーテル(Silastic catheter)を遠位側へと伸展させ、鼻粘膜下(Under nasal mucosa)に触診したカテーテル先端にむかって穿刺切開創(Stab incision)を設け、カテーテルを鼻側へと通過させます。鼻側涙点の開口部を確立させるため、カテーテルは眼瞼側および鼻側の両方において外部皮膚面へと縫合して、一ヶ月間にわたってカテーテルを留置させることが大切です。術後には、感受性試験の結果に基づいて、全身性および局所性の抗生物質療法(Systemic/Topical anti-microbial therapy)が施されます。

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