馬の病気:骨化性線維腫
馬の歯科病 - 2015年09月09日 (水)

骨化性線維腫(Ossifying fibroma)について。
口腔内に単発性の増殖性線維骨性腫瘤(Proliferative fibro-ooseous solitary mass)を生じる疾患で、一歳齢以下の若馬に好発します。口腔内の骨化性線維腫は、通常は吻側下顎(Rostral mandible)に片側性病変(Unilateral lesion)として起こりますが、稀に上顎(Maxilla)に発症する場合もあります。
骨化性線維腫の病因としては、病巣内において線維芽性実質(Fibroblastic stroma)から骨芽細胞(Osteoblasts)への急激な組織的変換(Abrupt histlogic transition)が観察されることから、歯周膜(Periodontal membrane)や発育歯(Developing teeth)の成長特性の変化(Alteration in growth characteristics)から線維骨性の腫瘤発現に至ると考えられています。
骨化性線維腫の罹患馬では、病変の肥大化(Enlargement)や切歯&前臼歯の緩み(Loosening of incisor/premolar teeth)に伴って、咀嚼不全(Malocclusion)や口唇の肉眼的歪み(Gross distortion)を起こします。また、腫瘤表面の潰瘍(Ulceration)による二次性細菌感染(Secondary bacterial infection)を続発したり、下顎の骨吸収(Bone resorption)に起因して病理性骨折(Pathologic mandibular fracture)を起こす危険もあります。
骨化性線維腫の診断は、その好発部位と視診によって推定診断(Presumptive diagnosis)が下されますが、頭部レントゲン検査(Head radiography)によって病巣の浸潤範囲や深度を確認したり、針穿刺生検(Fine needle biopsy)による病理組織学的検査(Histopathological examination)が行われる場合もあります。馬の骨化性線維腫のレントゲン像では、他の動物種において見られるような腫瘤組織の石灰化(Calcification)はあまり顕著ではない事が知られています。
骨化性線維腫の治療では、腫瘤の外科的切除が行われますが、周辺組織(Margin tissue)の除去が不十分であった場合には、腫瘤病巣の再発(Recurrence)が見られることもあります。また、外科的切除に放射線療法(Radiation therapy)を併用したり、放射線療法のみによる治療成功例も報告されています。病巣が広範囲に及ぶ症例では、下顎半切除術(Hemimandibulectomy)や上顎半切除術(Hemimaxillectomy)が応用される場合もあり、術後には比較的良好な美容的概観(Cosmetic appearance)と摂食機能の回復が達成できることが示されています。
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