馬の文献:食道閉塞(Erkert et al. 2002)
文献 - 2015年09月12日 (土)
「ネオジウムヤグレーザーによる馬の食道過増殖性肉芽組織の切除」
Erkert RS, MacAllister CG, Higbee R, Moll HD, Reiners S, Crowson C, Bahr R, Bartels KE. Use of a neodymium:yttrium-aluminum-garnet laser to remove exuberant granulation tissue from the esophagus of a horse. J Am Vet Med Assoc. 2002; 221(3): 403-407.
この症例論文では、ネオジウムヤグレーザー(Neodymium yttrium aluminium garnet laser)を用いての、馬の食道過増殖性肉芽組織(Esphageal exuberant granulation tissue)の切除が行われた一症例が報告されています。
この症例馬は、回帰性食道閉塞(Recurrent esophageal obstruction)の病歴と、頚部の伸展姿勢(Neck extension posture)、両側性の鼻汁排出(Bilateral nasal discharge)、咳嗽(Coughing)などの臨床症状を呈し、内視鏡検査(Endoscopy)によって食道の潰瘍性管腔内腫瘤(Ulcerative luminal mass)が発見されました。また、頚部レントゲン検査(Cervical radiography)では腫瘤が食道長軸の比較的広範囲にわたって形成されていることが観察され、固着性もしくは壁在性腫瘤(Sessile/Mural mass)の発現が疑われました。腫瘤のサイズから、内科的療法による治癒は期待できないと考えられたため、治療としてはネオジウムヤグレーザを介しての、腫瘤の外科的切除(Surgical removal)が選択されました。
手術では、内視鏡を介して食道を空気で拡張させ、腫瘤表面にエピネフリンの滴下を行った後(出血を抑えるため)、生検鉤で腫瘤を操作しながらNd-YAGレーザーによる切除が試みられました。初回手術では、出血によって視野が阻害されたため、三日後と七日後の再手術によって、腫瘤はほぼ完全に切除されました。術後には柔らかい飼料の給餌と、非ステロイド系抗炎症剤(Non-steroidal anti-inflammatory drugs)および広域抗生物質(Broad-spectrum antibiotics)の投与が行われ、術後の二週間目の内視鏡による再検査では、腫瘤切除部位が良好な治癒を見せていることが確認され、退院三ヶ月目の稟告では食道閉塞の再発も起きていないことが報告されました。
一般的に、食道は漿膜層(Serosal layer)を欠き、頚部の動きや嚥下によって創傷治癒の遅延(Delayed healing)が起きやすい器官であり、また、食道内腔に達する術式では術創の感染に起因する術後合併症(Post-operative complications)を起こす危険性が高いことから、食道造瘻術(Esophagostomy)を介することなく腫瘤切除が可能な内視鏡レーザー手術は、極めて有用な外科的治療法であることが示唆されました。しかし、その施術に際しては、食道穿孔(Esophageal perforation)や周辺光熱外傷(Collateral photothermal trauma)などの医原性疾患(Iatrogenic disorders)を防ぐため、複数回に分けて手術を行い、レーザー暴露した食道粘膜面が充分に治癒する時間をとる必要があると考えられました。
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この症例論文では、ネオジウムヤグレーザー(Neodymium yttrium aluminium garnet laser)を用いての、馬の食道過増殖性肉芽組織(Esphageal exuberant granulation tissue)の切除が行われた一症例が報告されています。
この症例馬は、回帰性食道閉塞(Recurrent esophageal obstruction)の病歴と、頚部の伸展姿勢(Neck extension posture)、両側性の鼻汁排出(Bilateral nasal discharge)、咳嗽(Coughing)などの臨床症状を呈し、内視鏡検査(Endoscopy)によって食道の潰瘍性管腔内腫瘤(Ulcerative luminal mass)が発見されました。また、頚部レントゲン検査(Cervical radiography)では腫瘤が食道長軸の比較的広範囲にわたって形成されていることが観察され、固着性もしくは壁在性腫瘤(Sessile/Mural mass)の発現が疑われました。腫瘤のサイズから、内科的療法による治癒は期待できないと考えられたため、治療としてはネオジウムヤグレーザを介しての、腫瘤の外科的切除(Surgical removal)が選択されました。
手術では、内視鏡を介して食道を空気で拡張させ、腫瘤表面にエピネフリンの滴下を行った後(出血を抑えるため)、生検鉤で腫瘤を操作しながらNd-YAGレーザーによる切除が試みられました。初回手術では、出血によって視野が阻害されたため、三日後と七日後の再手術によって、腫瘤はほぼ完全に切除されました。術後には柔らかい飼料の給餌と、非ステロイド系抗炎症剤(Non-steroidal anti-inflammatory drugs)および広域抗生物質(Broad-spectrum antibiotics)の投与が行われ、術後の二週間目の内視鏡による再検査では、腫瘤切除部位が良好な治癒を見せていることが確認され、退院三ヶ月目の稟告では食道閉塞の再発も起きていないことが報告されました。
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