馬の病気:ロタウイルス下痢症
馬の消化器病 - 2013年04月20日 (土)

ロタウイルス下痢症(Rotaviral diarrhea)について。
ロタウイルス(特にA型のG3血清型)の感染によって急性下痢症(Acute diarrhea)を起こす疾患で、60日齢以下の幼馬(特に3~35日齢)に好発します。ロタウイルスの感染から下痢を生じる機序としては、乳糖分解酵素の分泌減退(Reduction of lactase production)によって増加した不消化乳糖(Undigested lactose)に起因する腸管内浸透圧の上昇、ウイルス感染後の代償性腺窩細胞増殖(Compensatory crypt proliferation)による小腸分泌液の増加、ウイルスの産生するエンテロトキシンに起因する全腸炎(Enterocolitis)、などが挙げられています。
ロタウイルス感染の症状としては、食欲不振(Anorexia)と抑欝(Depression)に続いて、中程度~重度の下痢症状(Moderate to severe diarrhea)を呈し、脱水(Dehydration)や体重減少(Weight loss)なども見られます。また、二週間齢以下の新生児においては、特に致死的な水様性下痢症を呈する可能性が高いことが報告されています。ロタウイルス下痢症の診断では、糞便の電子顕微鏡検査(Electron microscopy)もしくはELISA法でのウイルスの検知が試みられます。
ロタウイルス下痢症の治療では、補液療法(Fluid therapy)による再水和(Rehydration)と、電解質不均衡(Electrolyte imbalance)の改善を第一指針とします。また、非ステロイド性抗炎症剤(Non-steroidal anti-inflammatory drugs)を用いて腸炎の解消が試みられる場合もありますが、粘膜治癒を促進する作用を持つ、プロスタグランディンEを拮抗する副作用があるため、投与は慎重に行うことが重要です。
ロタウイルス下痢症の予防としては、妊娠牝馬へのワクチン投与が有効で、ロタウイルス感染に至った子馬においても、症状発現を遅らせる結果、比較的良好な予後が期待できることが示されています。また、粉末状の牛初乳免疫グロブリン(Bovine colostral immunoglobulin power)の投与によって、ロタウイルス下痢症の予防が可能であるという報告もあります。
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