馬の文献:胃潰瘍(McClure et al. 2005b)
文献 - 2015年09月16日 (水)

「調教中の競走馬におけるオメプラゾールによる胃潰瘍の再発予防効果」
McClure SR, White GW, Sifferman RL, Bernard W, Hughes FE, Holste JE, Fleishman C, Alva R, Cramer LG. Efficacy of omeprazole paste for prevention of recurrence of gastric ulcers in horses in race training. J Am Vet Med Assoc. 2005; 226(10): 1685-1688.
この研究論文では、調教中の競走馬におけるオメプラゾールによる胃潰瘍(Gastric ulceration)の再発(Recurrence)の予防効果を評価するため、胃潰瘍の発症が確認された競走馬に対して、まず最初に、高濃度のオメプラゾール投与(4mg/kg once a day for 28 days)による治療が行われた後、低濃度のオメプラゾール投与(1mg/kg once a day for 28 day)による再発予防試験が実施され、この予防期間(Preventive phase)の前後における胃内視鏡検査(Gastroscopy)による胃潰瘍スコアの比較が行われました。
結果としては、1mg/kg濃度のオメプラゾール投与が行われた馬では、偽投与郡(Sham-dose group)の馬に比較して、予防期間後において有意に低い胃潰瘍スコアが認められました。また、予防期間後において。胃潰瘍の再発が予防された馬の割合は、偽投与郡では17%であったのに対して、1mg/kg濃度のオメプラゾール投与郡では79%であったことが報告されています。このため、胃潰瘍を発症した調教中の競走馬の症例に対しては、高濃度のオメプラゾール投与による治療後にも、低濃度のオメプラゾール投与を継続することで、十分な胃潰瘍の再発予防効果が期待できることが示唆されました。
この研究では、投与量確認試験(Dose confirmation)の前に、二種類の濃度のオメプラゾール投与による、投与量選択試験(Dose selection)が行われ、胃潰瘍の再発が予防された馬の割合は、1mg/kg濃度のオメプラゾール投与が行われた馬では80%であったのに対して、0.5mg/kg濃度では33%、偽投与郡では25%であったことが報告されています。このため、胃潰瘍の再発予防のためには、0.5mg/kg濃度では低すぎ、少なくとも1mg/kg濃度のオメプラゾール投与が必要であることが示唆されました。そして、この再発予防のための投与濃度(Recurrence prevention dosage)は、同時期に発表された文献(McClure et al. JAVMA. 2005;226:1685)で報告されている、胃潰瘍の発症予防のための投与濃度(Prevention dosage)とも合致していました。
この研究では、予防期間のまえの治療期間において、高濃度のオメプラゾール投与(4mg/kg)によって胃潰瘍が完治した馬の割合は、投与量確認試験における治療期間後では91%、投与量選択試験における治療期間後では98%であったことが報告されており、いずれも、4mg/kg濃度のオメプラゾール療法による、良好な胃潰瘍の治療効果を改めて裏付けるデータが示されました。
一般的に、一度治った胃潰瘍が再発してしまうと、再びその治療のためにコストが掛かるだけでなく、競走能力の低下も招くことから、レース収入減などの経済的なマイナス面も大きくなると考えられます。このため、一度でも胃潰瘍発症が認められた馬に対しては、病巣の治癒後にも低濃度のオメプラゾール投与を継続して、胃潰瘍の再発予防を試みるという方針ほうが、結果として経済的利益増につながると共に、動物愛護の観点から言っても推奨されるべき管理指針である、という考察がなされています。
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