馬の文献:内毒素血症(Fugler et al. 2011)
文献 - 2015年09月23日 (水)
「LPS経静脈点滴およびMMP抑制剤治療の馬における血漿MMP活性」
Fugler LA, Eades SC, Moore RM, Koch CE, Keowen ML. Plasma matrix metalloproteinase activity in horses after intravenous infusion of lipopolysaccharide and treatment with matrix metalloproteinase inhibitors. Am J Vet Res. 2013; 74(3): 473-480.
この研究論文では、馬の内毒素血症(Endotoxemia)の治療薬として、マトリックスメタロプロテイナーゼ(Matrix metalloproteinase: MMP)の抑制剤(MMP inhibitors)の効能を検討するため、29頭の健常馬を用いて、リポポリサッカライド(Lipopolysaccharide: LPS)の経静脈点滴(Intravenous infusion)によって実験的な内毒素血症を作り出し、そのLPSの投与前と投与後(最大12時間後まで)に、四種類のMMP抑制剤(Doxycycline, Oxytetracycline, Flunixin meglumine, Pentoxifylline)を投与して、その間に血漿検体(Plasma samples)を採取して、酵素電気泳動法(Zymographic analysis)を用いたMMP活性の評価が行われました。
結果としては、MMP抑制剤の投与によって血漿中のMMP活性を抑える効果が確認され、このうち、PentoxifyllineおよびOxytetracyclineの投与においては、MMP-2活性とMMP-9活性の抑制が達成されたのに対して、DoxycyclineおよびFlunixin meglumineの投与においては、MMP-9活性よりもMMP-2活性のほうをより効率的に抑制することが示されました。このため、内毒素血症の罹患馬においては、MMPが関与する病的状態(MMP-associated diseases)の治療法として、PentoxifyllineおよびOxytetracyclineの投与が有用である可能性が示唆されました。
一般的に、Flunixin meglumineを含む非ステロイド系抗炎症薬(Non-steroidal anti-inflammatory drugs: NSAID)は、シクロオキシゲナーゼ(Cyclooxygenase: COX)の非選択的抑制薬(Non-selective COX inhibitor)であり、COX-2がMMP活性を上昇させることから、そのCOX-2を抑えるNSAIDを投与することで、MMP-2およびMMP-9の活性を減少させることが知られています(Pan et al. J Biol Chem. 2002;277:32775, Peluffo et al. Int J Cancer. 2004;110:825)。また、NSAID投与によって、膜アンカー性の内在性MMP抑制物質(Membrane-anchored endogenous MMP inhibitor)であるRECK活性が上方制御(Upregulation)されて、この結果、MMP-2活性の減退およびMMP-9遊離の抑制が起こる、という知見も示されています(Liu et al. Oncogene. 2002;21:8347, Oh et al. Cell. 2001;107:789)。
一般的に、Pentoxifyllineを含むホスホジエステラーゼ抑制薬(Phosphodiesterase inhibitors)は、リン酸化経路を阻害(Disrupt phosphorylation pathways)する作用を持つ細胞内cAMP濃度(Intracellular cAMP concentrations)を減少させることで、MMP活性を調節する作用を担っており(Coimbra et al. J Trauma. 2006;60:115)、ヒトの末梢脈管疾患(Peripheral vascular disease)の治療に用いられています(Dua et al. Cancer Chemother Pharmacol. 2006;58:195)。また、Pentoxifyllineには、好中球の浸潤と活性化(Neutrophil infiltration and activation)を減少させる効果もあり、好中球はMMP-9の重要な出処であることから、Pentoxifyllineによる好中球抑制が、MMP-9活性減退という効能につながっている可能性も示唆されています(Coimbra et al. Surg Infect. 2005;6:73)。
一般的に、強力なMMP-9抑制薬であるDoxycyclineは、ヒトの医学で承認されているMMP抑制剤であり、MMP-2活性はあまり抑制しないことが知られています(Ramamurthy et al. J Periodontol. 2002;73:726)。しかし、この研究では、Doxycycline投与によって、MMP-9抑制よりもMMP-2抑制のほうが顕著に認められました。その理由としては、MMP-9分泌の内在性抑制物質(Endogenous inhibitor)であるメタロプロテイナーゼ1の組織抑制物質(Tissue-inhibitor of metalloproteinase-1)が上方制御された可能性があると考察されています(Yao et al. Neurochem Int. 2007;50:524)。
一般的に、Tetracycline系薬剤であるOxytetracyclineは、強力なMMP-9抑制作用と、中程度のMMP-2抑制作用を持っていますが、その臨床的効能ははっきりとは検証されていませんでした。この研究では、Oxytetracycline投与によって、MMP-2抑制よりもMMP-9抑制のほうが顕著に認められ、これは、過去の文献の知見とも合致するものでした(Ramamurthy et al. J Periodontol. 2002;73:726, Yao et al. Neurochem Int. 2007;50:524)。
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この研究論文では、馬の内毒素血症(Endotoxemia)の治療薬として、マトリックスメタロプロテイナーゼ(Matrix metalloproteinase: MMP)の抑制剤(MMP inhibitors)の効能を検討するため、29頭の健常馬を用いて、リポポリサッカライド(Lipopolysaccharide: LPS)の経静脈点滴(Intravenous infusion)によって実験的な内毒素血症を作り出し、そのLPSの投与前と投与後(最大12時間後まで)に、四種類のMMP抑制剤(Doxycycline, Oxytetracycline, Flunixin meglumine, Pentoxifylline)を投与して、その間に血漿検体(Plasma samples)を採取して、酵素電気泳動法(Zymographic analysis)を用いたMMP活性の評価が行われました。
結果としては、MMP抑制剤の投与によって血漿中のMMP活性を抑える効果が確認され、このうち、PentoxifyllineおよびOxytetracyclineの投与においては、MMP-2活性とMMP-9活性の抑制が達成されたのに対して、DoxycyclineおよびFlunixin meglumineの投与においては、MMP-9活性よりもMMP-2活性のほうをより効率的に抑制することが示されました。このため、内毒素血症の罹患馬においては、MMPが関与する病的状態(MMP-associated diseases)の治療法として、PentoxifyllineおよびOxytetracyclineの投与が有用である可能性が示唆されました。
一般的に、Flunixin meglumineを含む非ステロイド系抗炎症薬(Non-steroidal anti-inflammatory drugs: NSAID)は、シクロオキシゲナーゼ(Cyclooxygenase: COX)の非選択的抑制薬(Non-selective COX inhibitor)であり、COX-2がMMP活性を上昇させることから、そのCOX-2を抑えるNSAIDを投与することで、MMP-2およびMMP-9の活性を減少させることが知られています(Pan et al. J Biol Chem. 2002;277:32775, Peluffo et al. Int J Cancer. 2004;110:825)。また、NSAID投与によって、膜アンカー性の内在性MMP抑制物質(Membrane-anchored endogenous MMP inhibitor)であるRECK活性が上方制御(Upregulation)されて、この結果、MMP-2活性の減退およびMMP-9遊離の抑制が起こる、という知見も示されています(Liu et al. Oncogene. 2002;21:8347, Oh et al. Cell. 2001;107:789)。
一般的に、Pentoxifyllineを含むホスホジエステラーゼ抑制薬(Phosphodiesterase inhibitors)は、リン酸化経路を阻害(Disrupt phosphorylation pathways)する作用を持つ細胞内cAMP濃度(Intracellular cAMP concentrations)を減少させることで、MMP活性を調節する作用を担っており(Coimbra et al. J Trauma. 2006;60:115)、ヒトの末梢脈管疾患(Peripheral vascular disease)の治療に用いられています(Dua et al. Cancer Chemother Pharmacol. 2006;58:195)。また、Pentoxifyllineには、好中球の浸潤と活性化(Neutrophil infiltration and activation)を減少させる効果もあり、好中球はMMP-9の重要な出処であることから、Pentoxifyllineによる好中球抑制が、MMP-9活性減退という効能につながっている可能性も示唆されています(Coimbra et al. Surg Infect. 2005;6:73)。
一般的に、強力なMMP-9抑制薬であるDoxycyclineは、ヒトの医学で承認されているMMP抑制剤であり、MMP-2活性はあまり抑制しないことが知られています(Ramamurthy et al. J Periodontol. 2002;73:726)。しかし、この研究では、Doxycycline投与によって、MMP-9抑制よりもMMP-2抑制のほうが顕著に認められました。その理由としては、MMP-9分泌の内在性抑制物質(Endogenous inhibitor)であるメタロプロテイナーゼ1の組織抑制物質(Tissue-inhibitor of metalloproteinase-1)が上方制御された可能性があると考察されています(Yao et al. Neurochem Int. 2007;50:524)。
一般的に、Tetracycline系薬剤であるOxytetracyclineは、強力なMMP-9抑制作用と、中程度のMMP-2抑制作用を持っていますが、その臨床的効能ははっきりとは検証されていませんでした。この研究では、Oxytetracycline投与によって、MMP-2抑制よりもMMP-9抑制のほうが顕著に認められ、これは、過去の文献の知見とも合致するものでした(Ramamurthy et al. J Periodontol. 2002;73:726, Yao et al. Neurochem Int. 2007;50:524)。
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