馬の文献:回腸便秘(Proudman et al. 1998)
文献 - 2015年09月28日 (月)
「条虫感染は馬の回腸便秘および痙攣疝の有意な危険因子である」
Proudman CJ, French NP, Trees AJ. Tapeworm infection is a significant risk factor for spasmodic colic and ileal impaction colic in the horse. Equine Vet J. 1998; 30(3): 194-199.
この症例論文では、馬の回腸便秘(Ileal impaction)および痙攣疝(Spasmodic colic)の発症に対する、条虫感染(Tapeworm infection)の関与を評価する目的で、20頭の回腸便秘の罹患馬、および103頭の痙攣疝の罹患馬における条虫(Anoplocephala perfoliata)の寄生度合いの判定のための、血清および糞便検査(Serum/Fecal examination)が実施されました。
この研究では、糞形学的解析(Coprological study)の結果から、条虫感染を起こしている馬では、起こしていない馬に比べて、回腸便秘を発症する可能性が34倍も高くなることが示されました(オッズ比:34.0)。また、血清抗体濃度を条虫への暴露度合い(Exposure level)の目安とした場合の病因分率(Aetiological fraction)の結果から、回腸便秘の症例のうち81%において、条虫感染がその発症に関与していることが示唆されました(病因分率:0.806)。一般的に条虫は、回腸盲腸移行部(Ileo-cecal junction)に好んで寄生するため、重度の条虫感染を呈した馬では、様々な回腸&盲腸疾患を続発する危険が高まると予測されます。このため、馬の回腸便秘においては、条虫感染が有意な危険因子(Risk factor)であることが示唆され、適切な駆虫プログラムおよび衛生管理によって条虫の寄生を防ぐことが、馬の回腸便秘の予防に有効であると考えられました。
この研究では、条虫感染を起こしている馬では、起こしていない馬に比べて、痙攣疝を発症する可能性が八倍も高くなることが示されました(オッズ比:8.0)。また、血清抗体濃度を条虫寄生の重篤度(Infection intensity)の目安とした場合の病因分率の結果から、痙攣疝の症例のうち22%において、条虫感染がその発症に関与していることが示唆されました(病因分率:0.216)。このため、回腸便秘と同様に、馬の痙攣疝においても、条虫感染が有意な危険因子であることが示唆されました。
この研究では、糞便検査による円虫感染(Strongyle infection)の評価も合わせて行われましたが、円虫寄生の重篤度と痙攣疝の発症とのあいだには有意な相関は認められず、円虫感染が痙攣疝の危険因子となりうるという他の文献の報告と矛盾するデータが示されました。この要因としては、(1)この文献における虫卵数が他の文献のものよりも低く、円虫寄生は高濃度である場合においてのみ痙攣疝の危険因子となる可能性があること、(2)被嚢幼虫(Encysted larvae)の寄生を生じていた馬は、この文献の手法では探知されなかったと考えられること、などが挙げられています。
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Proudman CJ, French NP, Trees AJ. Tapeworm infection is a significant risk factor for spasmodic colic and ileal impaction colic in the horse. Equine Vet J. 1998; 30(3): 194-199.
この症例論文では、馬の回腸便秘(Ileal impaction)および痙攣疝(Spasmodic colic)の発症に対する、条虫感染(Tapeworm infection)の関与を評価する目的で、20頭の回腸便秘の罹患馬、および103頭の痙攣疝の罹患馬における条虫(Anoplocephala perfoliata)の寄生度合いの判定のための、血清および糞便検査(Serum/Fecal examination)が実施されました。
この研究では、糞形学的解析(Coprological study)の結果から、条虫感染を起こしている馬では、起こしていない馬に比べて、回腸便秘を発症する可能性が34倍も高くなることが示されました(オッズ比:34.0)。また、血清抗体濃度を条虫への暴露度合い(Exposure level)の目安とした場合の病因分率(Aetiological fraction)の結果から、回腸便秘の症例のうち81%において、条虫感染がその発症に関与していることが示唆されました(病因分率:0.806)。一般的に条虫は、回腸盲腸移行部(Ileo-cecal junction)に好んで寄生するため、重度の条虫感染を呈した馬では、様々な回腸&盲腸疾患を続発する危険が高まると予測されます。このため、馬の回腸便秘においては、条虫感染が有意な危険因子(Risk factor)であることが示唆され、適切な駆虫プログラムおよび衛生管理によって条虫の寄生を防ぐことが、馬の回腸便秘の予防に有効であると考えられました。
この研究では、条虫感染を起こしている馬では、起こしていない馬に比べて、痙攣疝を発症する可能性が八倍も高くなることが示されました(オッズ比:8.0)。また、血清抗体濃度を条虫寄生の重篤度(Infection intensity)の目安とした場合の病因分率の結果から、痙攣疝の症例のうち22%において、条虫感染がその発症に関与していることが示唆されました(病因分率:0.216)。このため、回腸便秘と同様に、馬の痙攣疝においても、条虫感染が有意な危険因子であることが示唆されました。
この研究では、糞便検査による円虫感染(Strongyle infection)の評価も合わせて行われましたが、円虫寄生の重篤度と痙攣疝の発症とのあいだには有意な相関は認められず、円虫感染が痙攣疝の危険因子となりうるという他の文献の報告と矛盾するデータが示されました。この要因としては、(1)この文献における虫卵数が他の文献のものよりも低く、円虫寄生は高濃度である場合においてのみ痙攣疝の危険因子となる可能性があること、(2)被嚢幼虫(Encysted larvae)の寄生を生じていた馬は、この文献の手法では探知されなかったと考えられること、などが挙げられています。
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