馬の病気:大腸重積
馬の消化器病 - 2013年04月26日 (金)

大腸重積(Large intestinal intussusception)について。
大腸におこる重積症は、盲腸尖部(Cecal apex)が盲腸体部に内反する盲腸盲腸重積(Cecocecal intussusception)、または、盲腸尖部が盲腸結腸開口部(Cecocolic orifice)を通過して右腹側大結腸(Right ventralcolon)の内部まで達する盲腸結腸重積(Cecocolic intussusception)の病態を示し、2~3歳齢の若馬に発症が多いことが報告されています。大腸重積の病因としては、給餌内容の急激な変化(Rapid dietary change)、盲腸壁膿瘍(Cecal wall abscess)、サルモネラ菌感染(Salmonellosis)、アイメリア感染、普通円虫性血栓症(Strongylus vulgaris thrombosis)、有機リン酸(Organophosphate)の摂食、副交感神経刺激薬(Parasympathomimetic drug)の投与などが挙げられており、条虫侵襲(Tapeworm infestation)による粘膜炎症も素因となる可能性が示唆されています。
大腸重積の症状としては、過半数の症例において発熱(Fever)と中程度~重度の疝痛症状(Moderate to severe colic)を呈し、そのうちの殆どにおいて、鎮静剤(Sedatives)を用いても制御困難な疼痛症状が認められますが、血流阻害(Vascular compromise)と大腸閉塞(Large intestinal obstruction)の度合いによっては、軽度の疝痛(Mild colic)と慢性下痢症(Chronic diarrhea)を呈する場合もあります。盲腸盲腸重積の場合、直腸検査(Rectal examination)での異常所見は顕著でないことが多いですが、盲腸結腸重積では盲腸変位(Cecal displacement)や盲腸壁の浮腫(Cecal wall edema)が触知されたり、盲腸そのものが触診できない症例もあります。また、腹腔超音波検査(Abdominal ultrasonography)では、外鞘部(Intussuscipiens)の内部に入り込んだ嵌入部(Intussusceptum)が、特徴的な“牛目”像(Bullseye appearance)、または“的”状像(Target appearance)として観察される場合もあります。腹水検査(Abdominocentesis)では、蛋白濃度上昇が見られる症例もありますが、罹患部が外鞘内に閉鎖されているため、異常所見は顕著でない場合もあります。
大腸重積の治療では、正中開腹術(Midline celiotomy)を介して、患部マッサージによる重積部盲腸尖の引き戻しを試みますが、整復された重積部は虚血性壊死(Ischemic necrosis)を起こしている場合が多く、盲腸尖部および体部の部分切除術(Partial typhlectomy)が行われることが一般的です。盲腸結腸重積などにおいて盲腸尖を引き戻せない場合には、盲腸切断術(Cecal amutation)を要し、大結腸切開術(Colotomy)を介して内反している盲腸を右腹側大結腸内部で結紮し、盲腸尖部&体部を切除した後、切断端(Amputation stump)を大結腸外へ反転させ、大結腸切開創を縫合する術式が用いられます。また、重篤な盲腸壁浮腫のため、切断端の外反が困難な症例では、切断端を大結腸内に残したまま、回腸結腸瘻造設術(Ileocolostomy)もしくは空腸結腸瘻造設術(Jejunocolostomy)を施して、盲腸結腸開口部のバイパス形成を行います。盲腸切断術後には、腹腔汚染に起因する腹膜炎(Peritonitis)の危険が高いことから、全身性抗生物質療法(Systemic anti-microbial therapy)と腹腔洗浄(Abdominal lavage)が行われます。
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