fc2ブログ
RSS

馬の文献:大結腸捻転(Pease et al. 2004)

「大結腸捻転の罹患馬における大結腸壁の厚さ測定のための超音波検査の精度」
Pease AP, Scrivani PV, Erb HN, Cook VL. Accuracy of increased large-intestine wall thickness during ultrasonography for diagnosing large-colon torsion in 42 horses. Vet Radiol Ultrasound. 2004; 45(3): 220-224.

この症例論文では、腹部超音波検査(Abdominal ultrasonography)を用いての大結腸壁の厚さ(Large colon wall thickness)の測定値に基づく大結腸捻転(Large colon volvulus)の診断の精度(Accuracy)とその有用性を評価するため、42頭の外科的大結腸疾患の罹患馬に対する超音波検査が行われ、その後の開腹術(Celiotomy)または剖検(Necropsy)による確定診断との比較が行われました。腹部超音波検査は、右背側域(Right dorsal abdomen)、右腹側膁部(Right ventral flank)、右側第10肋間(Right 10th intercostals space)、腹側域(Ventral abdomen)、左背側域(Left dorsal abdomen)、左腹側膁部(Left ventral flank)の六ヶ所において実施されました。

結果としては、大結腸捻転の罹患馬では、他の大結腸疾患の罹患馬に比べて、有意に高い大結腸壁の厚さ測定値が示され、測定値には良好な精度(観察者内変動は2mm以下)が認められました。特に、腹側域における大結腸壁の厚さが9mm以上である所見をカットオフ値とした場合には、67%の感度(Sensitivity)と100%の特異度(Specificity)が得られたことから、超音波検査は比較的に高感度でかつ極めて信頼性の高い、大結腸捻転の診断指標になることが示唆されました。

この研究では、大結腸疾患の罹患馬のうち大結腸捻転が約三割を占め、これを大結腸捻転の有病率(Prevalence)と仮定すると、上述のカットオフ値(腹側域における大結腸壁の厚さが9mm以上)を用いた場合に、陽性適中率(Positive predictive value)は100%で、陰性適中率(Negative predictive value)は88%である事が示されました。つまり、大結腸疾患が疑われる馬郡の診断に際しては、超音波検査による陽性結果(>9mm)を示せば、その全頭で大結腸捻転を発症しているという予測(Prediction)が可能で、逆に陰性結果(<9mm)を示せば、その約九割で大結腸捻転を除外診断できる事が分かりました。

この研究では、腹側域の他に、右腹側膁部、右側第10肋間、左腹側膁部、などにおける大結腸壁の厚さ測定値においても、大結腸捻転と他の大結腸疾患とのあいだに有意差が見られ、また、全ての区域における超音波検査を実施しても、約15分間しか要しないことが報告されています。このため、大結腸疾患が疑われる全ての罹患馬に対して、左右の腹壁全域にわたる超音波検査を行うことで、さらに信頼性の高い大結腸捻転の診断が下せるという考察がなされています。

一般的に、開腹術が行われた大結腸疾患の罹患馬では、捻転を起こしていた場合の生存率(Survival rate)は四割~六割であるのに対して、非絞扼性の大結腸疾患(Non-strangulating large colon disorders)を起こしていた場合の生存率は九割前後であることが知られています。また、大結腸捻転の平均治療費は6000ドルであるのに対して、非絞扼性の大結腸疾患の平均治療費は3000ドルであったことも報告されています。このため、超音波検査によって精度および信頼性の高い診断を下して、的確に開腹術の応用か否かを判断することは、多くの疝痛診療の場で極めて有用であると考えられました。

Copyright (C) nairegift.com/freephoto/, freedigitalphotos.net/, ashinari.com/ All Rights Reserved.
Copyright (C) Akikazu Ishihara All Rights Reserved.

関連記事:
馬の病気:大結腸捻転




関連記事

プロフィール

Rowdy Pony

Author:Rowdy Pony
名前: 石原章和
性別: 男性
年齢: アラフィフ
住所: 北関東
職業: 獣医師・獣医学博士
叩けよ、さらば開かれん!

質問、御意見、記事の要望等は下記まで
E-mail: rowdyponies@gmail.com

最新記事

ブログメニュー

馬の話題

馬の病気の話題
・蹄葉炎, 切腱術
・ナビキュラー症候群
・蹄病一般, 装蹄
・腱靭帯疾患
・背部/腰部/仙腸部疾患
・プアパフォーマンス
・消化器疾患一般
・胃潰瘍
・虚血再灌流障害
・呼吸器の医療
・神経疾患, 神経学検査
・クッシング病
・繁殖疾患と繁殖学
・皮膚病の医療
・眼科疾患, 眼科治療
・歯科疾患, 歯科治療
・寄生虫病
・高齢馬の医療
・子馬の病気や管理法
・子馬/若齢馬の長期的影響
・突然死
・症例シリーズ

馬の医療の話題
・疝痛の検査
・経鼻チューブ
・腹水検査
・疝痛の予防
・疝痛の手術判断と予後予測
・開腹術の手技や合併症
・疝痛の外科的処置
・疝痛の獣医療での地域差
・跛行検査, 画像診断
・関節鏡
・去勢, 泌尿生殖器
・抗生物質
・COX-2限定阻害薬
・破骨細胞抑制剤
・ショックウェーブ
・パーグ治療
・馬のハンドリング, 投薬
・バイオマーカー
・麻酔
・整形外科
・キャスト, ピンキャスト
・再生医療
・先端医療
・良い死(Euthanasia)
・馬の獣医療一般

馬の一般的話題
・馬の飼養管理一般
・飼養管理での病気/怪我の予防
・馬学一般
・ウマ社会の話題
・獣医学一般, 日常
・馬の飼料
・跛行と運動
・調馬索
・サク癖
・馬の行動学や悪癖
・ハミや馬具
・輸送
・怪我や事故の予防,対処法
・ホースマンの怪我と事故
・競馬での事故死や骨折
・馬とヒト, 伝染病, 馬動物学

馬の診療シリーズ

サイト内タグ一覧

FC2カウンター

リンク

カレンダー

01 | 2024/02 | 03
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 - -

推薦図書

月別アーカイブ

お断わり

20130414_Blog_Message_Pict1.jpg
このサイトに掲載されているイラスト、画像、文章は、すべて管理主自身が作成したもの、もしくは、著作権フリーの素材リンクから転載したものです。

カテゴリ

全記事表示リンク

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
学問・文化・芸術
22位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
自然科学
2位
アクセスランキングを見る>>

FC2ブログランキング

天気予報


-天気予報コム- -FC2-

検索フォーム

QRコード

QR