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馬の病気:馬インフルエンザ

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馬インフルエンザ(Equine influenza)について。

馬インフルエンザウイルスの感染に起因して、急性呼吸器症状(Acute respiratory signs)を起こす疾患です。日本では、1971年に初めて流行(Epidemic)して、2007年に再び大規模な流行が起こりました。馬インフルエンザウイルスは、オルソミクソウイルス科のA型に分類され、罹患馬の咳などの飛沫を健常馬が吸入することで伝播します。

馬インフルエンザの症状としては、初期病態では、元気消失、流涙(Epiphora)、眼粘膜の紅潮(Ocular membrane blush)などが認められ、48時間以内に発熱(Fever)、発咳(Coughing)、食欲不振(Poor appetite)が見られます。そして、発症の三日目頃には、発熱は40度以上に達し、水様性鼻汁(Watery nasal discharge)が認められるようになります。血液検査では、軽度貧血(Mild anemia)と白血球数減少症(Leukopenia)を示しますが、これらは二週間程度で回復し、解熱に伴って膿性鼻汁(Purulent nasal discharge)が見られる事もあります。一般的に、日本では大多数の馬がワクチン接種を受けているため、軽度の徴候しか見せない場合が多いと言われています。

馬インフルエンザの診断では、まずヒトのインフルエンザ迅速診断キットを用いて、馬インフルエンザの簡易診断を実施します。その後、確定診断(Definitive diagnosis)としては、鼻腔拭き取り検体(Nasal swab samples)からウイルス分離を行い、特異免疫血清(Specific immune serum)を用いた血球凝集抑制試験(Hemagglutination inhibition test)によるウイルス同定が実施されます。また、血清診断(Serodiagnosis)としては、急性期と回復期の血清を用いて血球凝集抑制試験をおこなって、回復期血清の抗体価が、急性期のそれの四倍以上であった場合に、馬インフルエンザに感染していたと判定します。

馬インフルエンザの治療では、対症療法(Symptomatic treatment)と細菌の二次感染(Secondary bacterial infection)を防ぐための全身性抗生物質療法(Systemic anti-microbial therapy)が実施されますが、タミフル等の治療薬の使用は、費用の問題から現実的ではありません。

馬インフルエンザは、伝染力と病原性(Infectivity and pathogenicity)が非常に強いため、ワクチン接種による予防が極めて重要であり、日本では、世界水準よりも厳格なワクチン接種方針が定められています。また、インフルエンザウイルスは、絶えず抗原変異(Antigenic variation)を起こすため、最新流行株をワクチンに取り入れる体制を構築しています。

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