馬の病気:馬伝染性子宮炎
馬の感染症 - 2015年11月02日 (月)

馬伝染性子宮炎(Contagious equine metritis)について。
馬伝染性子宮炎は、馬特有の細菌性生殖器感染症(Bacterial genital infection)で、原因菌はテイロレラ属菌のTaylorella equigenitalisです。日本では、1980年代に散発的に流行していたものの、2006年以降の発生はなく、日本は清浄国であることが確認されています。馬伝染性子宮炎は、交配による直接伝播のほか、ヒトの手指や器具等による間接伝播によって感染が起こります。
馬伝染性子宮炎の罹患馬は、子宮内膜炎(Endometritis)による不妊(Infertility)を呈し、臨床症状としては、陰門部からの粘稠性の膿性粘液の排液(Purulent mucus discharge)が認められます。また、発情異常(Abnormal estrus)や流産(Abortion)を起こすこともあります。
馬伝染性子宮炎の診断は、生殖器浸出液および恥垢(Smegma)を用いた細菌培養(Bacterial culture)が行われますが、より高感度な手法として、PCR法も試みられています。また、感染後二週間目からは血清中に抗体が出現するため、補体結合反応(Complement binding reaction)や赤血球凝集反応(Hemagglutination reaction)による血清診断(Serodiagnosis)も可能です。
馬伝染性子宮炎の治療では、消毒薬と抗菌薬を用いて、局所に定着した菌を殺菌・除去することが重要です。馬伝染性子宮炎の予防では、有効なワクチンが開発されていないため、徹底した衛生管理(Thorough hygiene management)や、交配前の検査が最善の予防策になります。
Copyright (C) Akikazu Ishihara All Rights Reserved.