馬の病気:糞石症
馬の消化器病 - 2013年05月03日 (金)

糞石症(Fecalithiasis)について。
濃縮した糞塊(Inspissated feces)によって生じた糞石(Fecaliths)に起因して、小結腸の通過障害(Small colon obstruction)を起こす疾患で、ポニーやミニチュアホースに好発することが知られています。糞石症の病因としては、粗飼料の品質低下(Poor-quality roughage)、歯科疾患による咀嚼不全(Poor mastication due to dental diseases)、飲水量の減少(Reduced water intake)などが挙げられており、晩秋に発症が多いことが報告されています。
糞石症の類似疾患としては、不消化の植物で形成された植物石(Phytoconglobates)、体毛が凝縮されて形成された毛石(Trichobezoars)、石灰沈着(Mineral deposit)を起こした異物(Foreign body)、大結腸において形成されて小結腸へと迷入してきた腸結石(Enteroliths)、等が詰まることによって発症する病態も報告されています。
糞石症の症状としては、軽度の疝痛(Mild colic)、排便減退(Decreased manure production)、食欲不振(Anorexia)、裏急後重(Tenesmus)などが見られ、腹水検査(Abdominocentesis)によって軽度の蛋白濃度上昇が認められる事もあります。
糞石症の診断では、造影レントゲン検査(Contrast radiography)を介して、糞石の存在や小結腸の通過障害を確認する手法が有効で、直腸検査(Rectal examination)が可能なサイズの患馬においては、小結腸の硬化および膨満を触診することで推定診断が下されますが、糞石自体が触知されることはあまり多くありません。
糞石症の治療では、経鼻&経静脈補液療法(Enteral/Intravenous fluid therapy)、ミネラルオイルや硫酸マグネシウムの経口投与、起立位浣腸(Standing enema)などの内科的療法では、不応性(Refractory)を示す場合が多く、殆どの症例において正中開腹術(Midline celiotomy)と小結腸切開術(Small colon enterotomy)を介しての糞石摘出を要します。また、罹患部位の虚血性壊死(Ischemic necrosis)を呈した症例では、小結腸の切除と吻合術(Small colon resection and anastomosis)が行われます。
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