馬の文献:蹄葉炎(Nourian et al. 2010)
文献 - 2015年11月16日 (月)
「馬の蹄葉循環にアクセスするための蹄骨内注入法の開発」
Nourian AR, Mills PC, Pollitt CC. Development of intraosseous infusion of the distal phalanx to access the foot lamellar circulation in the standing, conscious horse. Vet J. 2010; 183(3): 273-277.
この研究論文では、馬の蹄葉循環(Foot lamellar circulation)に治療薬を到達させるための蹄骨内注入法(Intraosseous infusion of distal phalanx)を開発するため、六頭の正常馬を用いての起立位手術(Standing surgery)によって、内部に管の通った骨螺子(Cannulated bone screw)(=カニューレ骨螺子)を背側蹄壁(Dorsal hoof wall)から蹄骨皮質面(Cortical surface)へと挿入し、ジェンタマイシンを骨内注入して、蹄葉組織内に設置した微小透析プローブ(Microdialysis probe)および血液検体における、ジェンタマイシン濃度の測定が行われました。
結果としては、蹄葉組織内におけるジェンタマイシン濃度は、血液内の濃度よりも45倍以上も高い測定値を示し、そのピークは、蹄葉組織内濃度は投与開始から一時間後、血液内濃度は投与開始から二時間後であったことが示されました。また、蹄骨内注入のための蹄壁空窓(Hoof wall fenestration)やカニューレ骨螺子の穿刺は、鎮静剤(Sedation)の投与と遠軸種子骨神経麻酔(Abaxial nerve block)による遠位肢の局所麻酔(Local analgesia)のみで実施可能であった事が報告されています。このため、カニューレ骨螺子を介しての蹄骨内注入法は、蹄葉組織内に薬剤を到達させる有用な手法であることが示され、細菌性蹄骨炎(Bacterial pedal osteitis)などの感染性の蹄病だけでなく、蹄葉炎の治療薬および予防薬の投与ルートとして応用できる可能性が示唆されました。
この研究では、急激かつ多量の溶液を注入(Rapid/Excessive infusion)することによって、蹄葉組織の脈管損傷(Vascular damage)を生じる危険性を考慮して、毎分20マイクロリットル(一時間で1.2mL)という極めて緩やかな速度(Extremely low infusion rate)で骨内注入が実施されました。そして、この注入速度では、蹄葉組織損傷を引き起こす可能性は低いという考察がなされていますが、今後の研究では、骨内注入の完了後におけるMRI検査や組織学的検査(Histopathologic examination)によって、脈管系への副作用(Adverse effect)をより詳細に評価する必要があると考えられました。
この研究では、カニューレ骨螺子が蹄骨の皮質骨内に挿入されたため、止血帯(Tourniquet)を要することなく、抗生物質の注入を行うことが出来ました。一般的に、馬の第三中手骨(Third metacarpal bone)や脛骨(Tibia)などに対する骨内注入では、カニューレ骨螺子が骨髄腔(Bone marrow cavity)に達する深さまで挿入されるため、薬剤の注入が完了するまで止血帯を装着して、治療箇所より近位側への薬剤流出(Proximal outflow)を最小限に抑えて、組織内濃度を最大限にする手法が用いられています。
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Nourian AR, Mills PC, Pollitt CC. Development of intraosseous infusion of the distal phalanx to access the foot lamellar circulation in the standing, conscious horse. Vet J. 2010; 183(3): 273-277.
この研究論文では、馬の蹄葉循環(Foot lamellar circulation)に治療薬を到達させるための蹄骨内注入法(Intraosseous infusion of distal phalanx)を開発するため、六頭の正常馬を用いての起立位手術(Standing surgery)によって、内部に管の通った骨螺子(Cannulated bone screw)(=カニューレ骨螺子)を背側蹄壁(Dorsal hoof wall)から蹄骨皮質面(Cortical surface)へと挿入し、ジェンタマイシンを骨内注入して、蹄葉組織内に設置した微小透析プローブ(Microdialysis probe)および血液検体における、ジェンタマイシン濃度の測定が行われました。
結果としては、蹄葉組織内におけるジェンタマイシン濃度は、血液内の濃度よりも45倍以上も高い測定値を示し、そのピークは、蹄葉組織内濃度は投与開始から一時間後、血液内濃度は投与開始から二時間後であったことが示されました。また、蹄骨内注入のための蹄壁空窓(Hoof wall fenestration)やカニューレ骨螺子の穿刺は、鎮静剤(Sedation)の投与と遠軸種子骨神経麻酔(Abaxial nerve block)による遠位肢の局所麻酔(Local analgesia)のみで実施可能であった事が報告されています。このため、カニューレ骨螺子を介しての蹄骨内注入法は、蹄葉組織内に薬剤を到達させる有用な手法であることが示され、細菌性蹄骨炎(Bacterial pedal osteitis)などの感染性の蹄病だけでなく、蹄葉炎の治療薬および予防薬の投与ルートとして応用できる可能性が示唆されました。
この研究では、急激かつ多量の溶液を注入(Rapid/Excessive infusion)することによって、蹄葉組織の脈管損傷(Vascular damage)を生じる危険性を考慮して、毎分20マイクロリットル(一時間で1.2mL)という極めて緩やかな速度(Extremely low infusion rate)で骨内注入が実施されました。そして、この注入速度では、蹄葉組織損傷を引き起こす可能性は低いという考察がなされていますが、今後の研究では、骨内注入の完了後におけるMRI検査や組織学的検査(Histopathologic examination)によって、脈管系への副作用(Adverse effect)をより詳細に評価する必要があると考えられました。
この研究では、カニューレ骨螺子が蹄骨の皮質骨内に挿入されたため、止血帯(Tourniquet)を要することなく、抗生物質の注入を行うことが出来ました。一般的に、馬の第三中手骨(Third metacarpal bone)や脛骨(Tibia)などに対する骨内注入では、カニューレ骨螺子が骨髄腔(Bone marrow cavity)に達する深さまで挿入されるため、薬剤の注入が完了するまで止血帯を装着して、治療箇所より近位側への薬剤流出(Proximal outflow)を最小限に抑えて、組織内濃度を最大限にする手法が用いられています。
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