馬の文献:蹄葉炎(Schleining et al. 2011)
文献 - 2015年11月16日 (月)
「正常馬の前肢蹄において工業用ポリスチレンフォームパッドが荷重中心および負荷分布に及ぼす影響」
Schleining JA, McClure SR, Derrick TR, Wang C. Effects of industrial polystyrene foam insulation pads on the center of pressure and load distribution in the forefeet of clinically normal horses. Am J Vet Res. 2011; 72(5): 628-633.
この研究論文では、馬の蹄葉炎(Laminitis)の治療のための蹄底支持具(Hoof sole support)に有用な素材を検討するため、二十五頭の正常馬の両前肢蹄に工業用ポリスチレンフォームパッド(Industrial polystyrene foam insulation pads)を装着して、その後の48時間にわたって、圧力測定システム(Pressure measurement system)を用いての、荷重中心(Center of pressure)および負荷分布(Load distribution)の変化が評価されました。
結果としては、工業用ポリスチレンフォームパッドの装着直後から48時間後まで、総接地面積(Total contact surface area)は有意に高い値を示しましたが、この面積は時間の経過に伴って低下していく傾向が認められました。また、装着直後には荷重中心は頭側に移動(Cranial movement)していたものの、48時間後までには荷重中心は装着前よりも尾側へと移動していました。このため、蹄葉炎の発症馬に対しては、罹患肢の蹄底に工業用ポリスチレンフォームパッドを装着することで、蹄底支持面積の拡大による蹄骨変位(Displacement of distal phalanx)の予防効果、および、疼痛緩和(Pain reduction)の作用が期待できることが示唆されました。
この研究では、試験された蹄のうち32%において、48時間目までにはパッドが擦り切れて、蹄尖が地面に接触していたことが報告されています。これは、実験に用いたのが正常馬であったため、馬房内でかなり歩き回っていた事に起因すると考えられ、実際の急性蹄葉炎(Acute laminitis)の罹患馬においては、じっと立っていたり横臥している時間が長くなると予測され、このようなパッドの擦り切れは起こりにくいと考察されています。
一般的に、蹄葉炎の臨床症例に対するポリスチレンパッドの使用法には、様々な議論(Controversy)があり、パッドを二重にして装着させたり、パッドを24時間ごとに交換する、などの指針が用いられています。このため、この研究で示されたような、48時間以上に及ぶ総接地面積の増加効果や、装着から24~48時間における荷重中心の尾側移動作用は、実際の蹄葉炎の罹患馬を用いた研究で再現する必要があると考えられました。
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Schleining JA, McClure SR, Derrick TR, Wang C. Effects of industrial polystyrene foam insulation pads on the center of pressure and load distribution in the forefeet of clinically normal horses. Am J Vet Res. 2011; 72(5): 628-633.
この研究論文では、馬の蹄葉炎(Laminitis)の治療のための蹄底支持具(Hoof sole support)に有用な素材を検討するため、二十五頭の正常馬の両前肢蹄に工業用ポリスチレンフォームパッド(Industrial polystyrene foam insulation pads)を装着して、その後の48時間にわたって、圧力測定システム(Pressure measurement system)を用いての、荷重中心(Center of pressure)および負荷分布(Load distribution)の変化が評価されました。
結果としては、工業用ポリスチレンフォームパッドの装着直後から48時間後まで、総接地面積(Total contact surface area)は有意に高い値を示しましたが、この面積は時間の経過に伴って低下していく傾向が認められました。また、装着直後には荷重中心は頭側に移動(Cranial movement)していたものの、48時間後までには荷重中心は装着前よりも尾側へと移動していました。このため、蹄葉炎の発症馬に対しては、罹患肢の蹄底に工業用ポリスチレンフォームパッドを装着することで、蹄底支持面積の拡大による蹄骨変位(Displacement of distal phalanx)の予防効果、および、疼痛緩和(Pain reduction)の作用が期待できることが示唆されました。
この研究では、試験された蹄のうち32%において、48時間目までにはパッドが擦り切れて、蹄尖が地面に接触していたことが報告されています。これは、実験に用いたのが正常馬であったため、馬房内でかなり歩き回っていた事に起因すると考えられ、実際の急性蹄葉炎(Acute laminitis)の罹患馬においては、じっと立っていたり横臥している時間が長くなると予測され、このようなパッドの擦り切れは起こりにくいと考察されています。
一般的に、蹄葉炎の臨床症例に対するポリスチレンパッドの使用法には、様々な議論(Controversy)があり、パッドを二重にして装着させたり、パッドを24時間ごとに交換する、などの指針が用いられています。このため、この研究で示されたような、48時間以上に及ぶ総接地面積の増加効果や、装着から24~48時間における荷重中心の尾側移動作用は、実際の蹄葉炎の罹患馬を用いた研究で再現する必要があると考えられました。
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