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馬の文献:蹄葉炎(van Eps et al. 2015)

「馬の蹄に対する持続性の治療的冷却のための七種類の手法の比較」
van Eps AW, Orsini JA. A comparison of seven methods for continuous therapeutic cooling of the equine digit. Equine Vet J. 2014 Nov 11. doi: 10.1111/evj.12384. [Epub ahead of print]

この研究論文では、馬の蹄葉炎(Laminitis)の予防のための蹄の持続性な治療的冷却(Continuous therapeutic cooling)の手法を検討するため、四頭の実験馬の一方の前肢蹄を、手製の氷袋や市販の冷却用ブーツなどの様々な手法を用いて冷却して、八時間にわたる蹄壁表面温度(Hoof wall surface temperature)の計測が行われました。

結果としては、冷却開始後の二~八時間における蹄壁表面温度は、蹄から繋ぎまで含めた近位領域(Foot and extended proximally to at least include the pastern)を氷と水に漬ける手法(Ice and water immersion methods)において最も低く、補液バッグを氷袋として使った場合には5.2度、市販のアイスブーツを使った場合には2.7度であったことが分かりました。一方、アイスブーツで蹄を含まない遠位肢のみを冷却した場合には、蹄壁表面温度25.7度であり、また、蹄だけを冷却する手法においては、蹄冠スリーブを使った場合には21.5度、市販のアイスパックを使った場合には19.8度であったことが示されました。このため、蹄の寒冷療法に際しては、蹄全部と繋ぎまでを含めたエリアを冷却することで、効果的な蹄壁表面温度の低下が達成できることが示唆されました。

この理由としては、蹄角質より上の皮膚に直接的に氷水が触れるようにする事で、蹄への流れる動脈血を冷やすこと(Cooling the arterial supply)ができて、より効果的な蹄壁表面温度の低下につながったと考察されています。勿論、蹄壁の表面温度が、蹄内部の温度(Internal hoof temperature)や蹄葉組織の温度(Lamellar temperature)とまったく同じという証明はありませんが、他の文献では、同一の冷却方法を用いた複数の研究において、蹄の表面温度と内部温度には、1度の違いしか認められませんでした(Pollitt et al. EVJ. 2004;36:216, van Eps et al. EVJ. 2011;44:230)。

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