馬の文献:舟状骨症候群(Scheffer et al. 2001)
文献 - 2015年11月21日 (土)
「ナビキュラー装蹄法が様々な走路面において馬の遠位肢の運動力学に与える影響」
Scheffer CJ, Back W. Effects of 'navicular' shoeing on equine distal forelimb kinematics on different track surface. Vet Q. 2001; 23(4): 191-195.
この研究論文では、馬の舟状骨症候群(Navicular syndrome)に対する有効な装蹄療法(Therapeutic shoeing)の手法を検討するため、正常な十一頭のダッチブレッドの実験馬を用いて、蹄踵挙上具(Heel wedge)、エッグバー蹄鉄(Egg-bar shoe)、および通常の蹄鉄を装着した状態で、アスファルト、砂と線維の混合走路(Fiber and sand mix)、砂のみの走路における、運動力学的歩様解析(Kinematic gait analysis)を介しての、蹄回転(Hoof rotation)および球節の最大伸展(Maximal extension of fetlock joint)の評価が行われました。
結果としては、軟らかい走路では、エッグバー蹄鉄および通常の蹄鉄が装着された場合には、踏着中間期(Mid-stance period)における蹄角度がより陰性(=より前方への蹄回転)を示しましたが、エッグバー蹄鉄が装着された場合には、砂と線維の混合走路のほうが砂のみの走路に比べて、前方への蹄回転が減少する傾向が見られました。一方、蹄踵挙上具が装着された場合には、地面の性質に関わりなく、踏着中間期における蹄角度が安定していましたが、いずれにおいても、蹄踵挙上具が装着された場合のほうが、エッグバー蹄鉄および通常の蹄鉄が装着された場合に比べて、前方への蹄回転が有意に大きかったことが報告されています。さらに、蹄踵挙上具が装着された場合のほうが、エッグバー蹄鉄および通常の蹄鉄が装着された場合に比べて、球節の最大伸展が有意に低かったことが示されました。
このため、軟らかい走路では、エッグバー蹄鉄および通常の蹄鉄が装着された状態では、深屈腱(Deep digital flexor tendon)から舟状骨(Navicular bone)に掛かる圧迫力を減退させる効果が示されたものの(=蹄の前方回転が見られた)、他の文献で報告されているような(Riemersma et al. EVJ. 1996;28:126)、通常の蹄鉄よりもエッグバー蹄鉄のほうが、地面反力(Ground reaction force)の作用点を尾側にずらす効能(Caudal shift of application point)がある、という仮説を裏付けるデータは示されませんでした。一方、蹄踵挙上具が装着された状態では、他の文献で報告されているような(Wright et al. Vet Rec. 1993;133:109)、硬い地面において深屈腱から舟状骨に掛かる圧迫力を減退させるという効能が、軟らかい走路でも起こることが再確認されました。しかし、前方への蹄回転は、蹄踵挙上具が装着された状態のほうが、エッグバー蹄鉄および通常の蹄鉄が装着された状態よりも大きく、最大または最適な蹄回転(Maximal/Optimal rotation)に達している可能性がある、という考察がなされています。以上の結果を総合すると、(1)蹄踵挙上具の装着と砂の走路での運動は、舟状骨に掛かる力を最も効率的に減退させる、(2)エッグバー蹄鉄の装着と砂と線維の混合走路での運動は、舟状骨に掛かる力を中程度に減退させる、という結論付けがなされています。
この研究では、球節の最大伸展は、速歩における蹄鉄の種類および蹄踵挙上の有無に影響を受けることが示され、蹄鉄の種類は球節伸展を変化させないという他の文献の知見(Willemen et al. EVJ. 1999;31:25)とは、相反する結果(Conflicting results)が報告されています。しかし、この研究では、蹄鉄の種類および蹄踵挙上の有無が、蹄回転を変化させていることから、蹄角度と球節角度のあいだには独立性(Independency)がなく、蹄の前方回転に伴って、ある程度の球節伸展の減少が誘発されたと考察されています。
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この研究論文では、馬の舟状骨症候群(Navicular syndrome)に対する有効な装蹄療法(Therapeutic shoeing)の手法を検討するため、正常な十一頭のダッチブレッドの実験馬を用いて、蹄踵挙上具(Heel wedge)、エッグバー蹄鉄(Egg-bar shoe)、および通常の蹄鉄を装着した状態で、アスファルト、砂と線維の混合走路(Fiber and sand mix)、砂のみの走路における、運動力学的歩様解析(Kinematic gait analysis)を介しての、蹄回転(Hoof rotation)および球節の最大伸展(Maximal extension of fetlock joint)の評価が行われました。
結果としては、軟らかい走路では、エッグバー蹄鉄および通常の蹄鉄が装着された場合には、踏着中間期(Mid-stance period)における蹄角度がより陰性(=より前方への蹄回転)を示しましたが、エッグバー蹄鉄が装着された場合には、砂と線維の混合走路のほうが砂のみの走路に比べて、前方への蹄回転が減少する傾向が見られました。一方、蹄踵挙上具が装着された場合には、地面の性質に関わりなく、踏着中間期における蹄角度が安定していましたが、いずれにおいても、蹄踵挙上具が装着された場合のほうが、エッグバー蹄鉄および通常の蹄鉄が装着された場合に比べて、前方への蹄回転が有意に大きかったことが報告されています。さらに、蹄踵挙上具が装着された場合のほうが、エッグバー蹄鉄および通常の蹄鉄が装着された場合に比べて、球節の最大伸展が有意に低かったことが示されました。
このため、軟らかい走路では、エッグバー蹄鉄および通常の蹄鉄が装着された状態では、深屈腱(Deep digital flexor tendon)から舟状骨(Navicular bone)に掛かる圧迫力を減退させる効果が示されたものの(=蹄の前方回転が見られた)、他の文献で報告されているような(Riemersma et al. EVJ. 1996;28:126)、通常の蹄鉄よりもエッグバー蹄鉄のほうが、地面反力(Ground reaction force)の作用点を尾側にずらす効能(Caudal shift of application point)がある、という仮説を裏付けるデータは示されませんでした。一方、蹄踵挙上具が装着された状態では、他の文献で報告されているような(Wright et al. Vet Rec. 1993;133:109)、硬い地面において深屈腱から舟状骨に掛かる圧迫力を減退させるという効能が、軟らかい走路でも起こることが再確認されました。しかし、前方への蹄回転は、蹄踵挙上具が装着された状態のほうが、エッグバー蹄鉄および通常の蹄鉄が装着された状態よりも大きく、最大または最適な蹄回転(Maximal/Optimal rotation)に達している可能性がある、という考察がなされています。以上の結果を総合すると、(1)蹄踵挙上具の装着と砂の走路での運動は、舟状骨に掛かる力を最も効率的に減退させる、(2)エッグバー蹄鉄の装着と砂と線維の混合走路での運動は、舟状骨に掛かる力を中程度に減退させる、という結論付けがなされています。
この研究では、球節の最大伸展は、速歩における蹄鉄の種類および蹄踵挙上の有無に影響を受けることが示され、蹄鉄の種類は球節伸展を変化させないという他の文献の知見(Willemen et al. EVJ. 1999;31:25)とは、相反する結果(Conflicting results)が報告されています。しかし、この研究では、蹄鉄の種類および蹄踵挙上の有無が、蹄回転を変化させていることから、蹄角度と球節角度のあいだには独立性(Independency)がなく、蹄の前方回転に伴って、ある程度の球節伸展の減少が誘発されたと考察されています。
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