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馬の文献:舟状骨症候群(Erkert et al. 2005)

「舟状骨症候群の罹患馬に対するフェニルブタゾンおよびフルニキシン・メグルミンの投与におけるフォースプレート解析による鎮痛効果の比較」
Erkert RS, MacAllister CG, Payton ME, Clarke CR. Use of force plate analysis to compare the analgesic effects of intravenous administration of phenylbutazone and flunixin meglumine in horses with navicular syndrome. Am J Vet Res. 2005; 66(2): 284-288.

この研究論文では、馬の舟状骨症候群(Navicular syndrome)に対する有効な内科的療法を検討するため、掌側指神経麻酔(Palmar digital nerve block)による跛行改善(Lameness improvement)、およびレントゲン検査(Radiography)による異常所見によって、舟状骨症候群の推定診断(Presumptive diagnosis)が下された十二頭の馬に対して、フェニルブタゾン(Phenylbutazone)、フルニキシン・メグルミン(Flunixin meglumine)、および生食(Physiologic saline)を四日間にわたって投与して(二週間の休薬期間を置きながら)、跛行検査(Lameness examination)と、フォースプレートを用いての力学的歩様解析(Kinetic gait analysis)による、鎮痛効果(Analgesic effects)の比較が行われました。

結果としては、フェニルブタゾンおよびフルニキシン・メグルミンの投与から六時間後、十二時間後、二十四間後において、跛行グレードの有意な減少、および歩様解析による最大垂直力(Peak vertical force)の有意な増加が認められ、フェニルブタゾンおよびフルニキシン・メグルミンによって、有意な跛行改善(Lameness improvement)が見られました。しかし、いずれの測定値においても、フェニルブタゾンとフルニキシン・メグルミンのあいだには、有意差(Significant differences)は示されました。このため、舟状骨症候群の罹患馬に対しては、フェニルブタゾンやフルニキシン・メグルミンなどの非ステロイド系抗炎症剤(Non-steroidal anti-inflammatory drugs: NSAID)の投与によって、少なくとも投与から一日以内には、有意な鎮痛効果が誘導され、跛行症状の改善効果が期待できることが示唆されました。

この研究では、フェニルブタゾンおよびフルニキシン・メグルミンの投与後の歩様を、主観的な跛行グレードのみでなく、フォース・プレート解析によって評価することで、NSAID投与による鎮痛効果を、客観的かつ定量的に評価(Objective and quantitative evaluation)されています。そして、フェニルブタゾンとフルニキシン・メグルミンのあいだには、鎮痛効果に有意差は無く、フェニルブタゾンは運動器疼痛(Musculoskeletal and visceral pain)、フルニキシン・メグルミンは内臓疼痛(Visceral pain)に有効であるという、経験的前提(Anecdotal assumptions)を裏付けるデータは示されませんでした。しかし、今回の研究では、跛行検査および歩様解析は投与後の一日目までのみで、長期間のNSAID投与による慢性疼痛の減退効果や、胃潰瘍(Gastric ulceration)や右背側大結腸炎(Right dorsal colitis)などの消化器副作用(Alimentary adverse effect)の発症率については、更なる検証を要すると考えられました。

この研究では、四日間にわたるフェニルブタゾンおよびフルニキシン・メグルミンの投与から三十時間目には、跛行グレード減少や最大垂直力の増加に見られるような、生食投与に比べての有意な跛行改善は確認されず、今回の研究で使用された投与濃度においては、鎮痛効果の作用期間に顕著な差は認められませんでした。一般的に、馬における経静脈投与(Intra-venous administration)されたフェニルブタゾンの半減期は五時間半で、その40%が腎臓から排出されるのに対して(Lees et al. Cornell Vet. 1987;77:192)、馬における経静脈投与されたフルニキシン・メグルミンの半減期は一時間半で、その75%が腎臓から排出されることが知られています(Soma et al. AJVR. 1988;49:1894)。

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