馬の文献:蟻洞(Moyer et al. 1991)
文献 - 2015年12月09日 (水)
「蹄壁の複合性整復法の予備経験」
Moyer W, Sigafoos R. Preliminary experience and uses of composite hoof wall repair. Proc AAEP. 1991; 37: 681-686.
この研究論文では、馬の蟻洞(Hoof wall separation)によって生じる蹄壁欠損(Hoof wall loss)の治療に有効な、複合性整復法(Composite repair)が報告されています。
この研究では、乾燥&角化した蹄葉組織(Dry cornified lamina tissue)および壁下角質(Submural horn)を、ポリメタクリル酸メチル素材(Polymethylmethacrylate material: PMMA material)によって被覆する治療指針が取られました。このためには、まず蹄壁を研磨ドラム(Drum sander)または電動バー(Motorized burr)を用いて切除し、その深部組織を蹄鑢もしくはサンドペーパーによって更に研磨してから、表面をアセトンで洗浄しました。そして、この露出した角化蹄葉組織をPMMA素材で覆ってから、その周辺の蹄壁もPMMAで被覆されました。PMMAが十分に乾燥&硬化した後には、適切な蹄鉄が装着されました。
この研究では、PMMA被覆による蹄壁損失の充填によって、損傷部の良好な再生が起こり、多くの患馬が騎乗使役に復帰できたことが報告されており、治療失敗が見られたのは“非常に僅かな”(“Very few”)症例のみでした。PMMA素材の使用に際しては、治療箇所の蹄葉組織が充分に研磨されていることが重要であると提唱されており、また、外気温(Ambient temperature)がPMMA素材の固まる速度に影響することから、“適した環境”(Suitable environment)において治療を実施することが大切である、という考察がなされています。さらに、蹄壁損失に裂蹄(Hoof wall crack)が併発していた場合には、欠損部の両断端に空けたドリル孔もしくは設置した螺子のあいだにワイヤーを通すことで、蹄壁損失箇所の強度を上げてから蹄壁被覆を施すという複合整復(Composite repair)が試みられました。
この研究では、PMMAのような樹脂素材(Resin material)の利点として、通常の蹄壁に類似した硬さであるため、加工および釘の挿入が容易で、蹄壁の動きを妨げることがなく、踏着時の継続的な衝撃(Repeated concussion)によっても割れにくいことが上げられています。また、素早く設置&加工できるため、全ての患馬が治療から24時間以内に運動復帰を果たしており、一度、PMMA素材での被覆を行えば、最長で六ヶ月は再実施(Reapplication)を要しなかったことが報告されています。しかし、露出された組織が細菌&真菌感染(Bacterial/Fungal infection)を起こしていた場合には、PMMA素材による被覆は選択されなかった、と記述されているのみで、その対処法に関しては詳細には考察されていません。
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