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馬の文献:蟻洞(O’Grady. 1997)

「白線病(総説)」
O’Grady SE.White line disease. J Eq Vet Sci. 1997; 17: 236-237.

この総説論文では、馬の白線病(White line disease)の治療法が解説されています。

馬の白線病の治療では、罹患部位の蹄組織の除去(Removal of affected hoof tissue)と、損傷した蹄壁を支持する装蹄療法(Therapeutic shoeing)を基本指針とします。罹患した白線の範囲に関わりなく(Regardless of the extent of affected area)、蹄壁を切除(Hoof wall resection)して、異常組織を病巣清掃(Debridement)することで、深部組織を二週間おきに露出させることが重要です。その後、“蹄内壁”(Inner hoof wall)と蹄葉組織のあいだの堅固な結合(Solid junction)が再生するのを待って、エクイロックス等のアクリル製充填材(Acrylic filling material)を用いての蹄壁被覆が行われることもあります。

この際には、消毒剤によって露出箇所を殺菌することで、充填剤の深部における細菌&真菌感染(Bacterial/Fungal infection)を防ぐ手法も有効です。また、罹患箇所の汚染が重篤な場合には、金属板を装着させることで露出箇所の蹄壁を覆う指針も有用で、この場合には、定期的に金属板を取り外して、深部組織の病巣清掃および消毒を繰り返すことができる、という利点があります。装着する蹄鉄は通常のもので十分である場合が殆どですが、広範囲にわたる蹄壁欠損を生じた症例に対しては、エッグバー蹄鉄やハートバー蹄鉄によって、荷重を蹄踵や蹄叉に迂回させて、罹患箇所の蹄壁成長を促す手法が有効なケースもある、と提唱されています。

馬の蹄壁欠損の再生(Regeneration)に要する期間は、欠損箇所によって異なり、蹄冠(Coronary band)に達するような蹄尖壁(Toe hoof wall)の欠損では、十ヶ月以上も掛かることがあると考えられます。しかし、蹄壁欠損部が完治する前の適切な運動復帰時期(Appropriate timing of returning to exercise)に関しては、この論文の考察内では、“損傷の重篤度に左右される”(Depending on the severity of damage)と述べられているのみで、詳細な運動復帰時期の判断指針は示されていません。

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