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馬の文献:蟻洞(Turner. 1998)

「白線病(解説)」
Turner TA. Tutorial Article: White line disease. Equine Vet Educ. 1998; s4: 73-76.

この指導論文(Tutorial article)では、馬の白線病(White line disease)に起因する蟻洞(Hoof wall separation)の治療法が解説されています。

馬の白線病&蟻洞の治療では、罹患箇所の蹄壁切除(Removal of undermined hoof wall)、周辺蹄壁の安定化(Stabilization)、更なる感染の予防(Prevention of further infection)、の三つを基本指針とします。罹患部位の蹄壁は、細菌&真菌の温床となり、洗浄&消毒剤の浸透を妨げるため、全て切除することが重要で、蹄壁下の病巣清掃(Debridement)は、良好な角質結合(Good horn attachment)が確認する深さまで実施します。この際には、切除前にメチレンブルー等の染色剤を塗布することで、罹患箇所の蹄壁組織が完全に切除されたことを確認し易くする手法も有用で、十分な病巣清掃によって、角質化した葉状層(Keratinized layer of stratum lamellatum)を露出させることが大切です。

罹患蹄壁が切除された後には、蹄骨(Distal phalanx)の支持機能が減退して蹄骨掌側回転(Palmar rotation)を続発する危険性があるため、蹄底からの支持作用を及ぼせる装蹄療法(Therapeutic shoeing)、できれば蹄叉支持(Frog support)できるハートバー蹄鉄の装着が必要な症例もあります。この場合、ハートバー蹄鉄の使用は、レントゲン検査(Radiography)によって蹄骨回転が認められた後に行い、ハートバー蹄鉄の蹄叉支持部分の先端は、蹄骨尖よりも尾側(Caudal to the tip of distal phalanx)で、蹄骨底の長さ(Coffin bone’s solar length)の63%の位置(=通常は蹄骨尖から後方に1cmの位置)になるようにする指針が推奨されています。蹄鉄の装着に際して、釘を打つのに十分な蹄壁が無い場合には、蹄鉄に付加した大きめの鉄唇(Clips)を、周囲の蹄壁に螺子で固定する方法も有効です。

蹄壁切除された箇所の被覆には、抗生物質を含有させたポリメタクリル酸メチル(Antibiotic-impregnated polymethylmethacrylate [PMMA]: Equilox®)を使用することで、PMMA素材から溶出(Elution)した抗生物質を局所作用(Local administration)させて、充填材の深部での細菌&真菌感染(Bacterial/Fungal infection)を防ぐ指針が有効で、含有させる抗生物質としてはメトロニダゾールが用いられています。蹄壁被覆に際しては、充填材が剥れにくくなるよう、切除箇所の蹄壁の辺縁に内向きに傾斜(Bevelling the edges inward)(=内部のほうが外部よりも広くなるように)を施します。そして、まず始めに、抗生物質含有PMMAによって露出した深部組織を被覆し、次に、抗生物質を含んでいない通常のPMMAを使って、第一層の外側にさらに被覆します。このように、二重のPMMA層を作る利点としては、固まるのが遅い抗生物質含有PMMAによる第一層を通常PMMAの第二層で保護できる、第一層に含まれる抗生物質が外環境に溶出してしまうのを防げる、などが挙げられています。

馬の白線病&蟻洞の治療では、更なる感染を予防することも重要で、このためには、馬房敷料(Bedding material)を改善して清潔かつ乾燥した飼養環境(Clean/Dry environment)を維持する、ぬかるんだ牧草地への放牧を避ける、バイオチンやメチオニンを飼料添加(Feed supplement)することで堅固な蹄壁成長を促す(Stimulate solid hoof growth)、などの管理指針が含まれます。

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