馬の文献:蟻洞(Moyer. 2003)
文献 - 2015年12月12日 (土)
「蹄壁欠損:慢性蟻洞および裂蹄」
Moyer W. Hoof wall defects: chronic hoof wall separations and hoof wall cracks. Vet Clin North Am Equine Pract. 2003; 19(2): 463-477.
この総説論文(Review article)では、馬の慢性蟻洞(Chronic hoof wall separation)に起因する蹄壁欠損(Hoof wall defect)の治療法が解説されています。
馬の蟻洞に対する治療では、まず離断した蹄壁を完全に切除(Complete removal of separated hoof wall)して、損傷した角質内層(Damaged inner layer of horn)を露出させます。その後、罹患蹄には蹄鉄を装着して、周囲の正常な蹄壁を保護する指針が推奨されており、欠損箇所の両縁に鉄唇(Clips)を設置して、蹄壁の安定化(Stabilization)を図る手法も有用です。患馬は、清潔で乾燥した飼養環境(Clean and dry environment)に置き、周囲蹄壁への物理的負荷(Mechanical load to surrounding hoof wall)を抑えるため、運動を控えることが重要です。
馬の蟻洞の治療において、蹄壁切除によって露出した箇所の深部組織が、完全に角化(Complete keratinization)した後には、この部位を充填材(Filling material)で被覆する手法が有効です。馬の蹄壁組織に類似する組成の充填材としては、ポリメタクリル酸メチル(Polymethylmethacrylate: PMMA)が最も頻繁に用いられていますが、その他の市販素材によっても良好な蹄壁被覆ができる場合もあります。蹄壁被覆に際しては、露出箇所の深部組織に刻みを入れたり(Undercutting the exposed tissue)、周囲の蹄壁を紙ヤスリなどで研磨することで(Sanding the surrounding hoof wall)、充填材が接着しやすくすることが重要で、蹄冠(Coronary band)はマスキングテープを貼って保護するようにします。
その後、罹患部位を洗浄&消毒し、ドライヤーによる温風などで乾燥させてから、十分な量のPMMAによって露出した深部組織および周囲蹄壁を被覆します。そして、充填材の表面を、木の舌圧子(Tongue depressor)などで平坦にならしてから、その上からKevler繊維を当てて、充填材が完全に固まるまで待ちます。この場合に、露出させた深部組織が汚染していて、被覆後に細菌&真菌感染(Bacterial/Fungal infections)を続発する危険があると判断される場合には、充填材に小さな穴を開けておくことで、蹄壁被覆後にも洗浄消毒剤による罹患箇所の処置ができるようにしておく方法が提唱されています。
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馬の蟻洞に対する治療では、まず離断した蹄壁を完全に切除(Complete removal of separated hoof wall)して、損傷した角質内層(Damaged inner layer of horn)を露出させます。その後、罹患蹄には蹄鉄を装着して、周囲の正常な蹄壁を保護する指針が推奨されており、欠損箇所の両縁に鉄唇(Clips)を設置して、蹄壁の安定化(Stabilization)を図る手法も有用です。患馬は、清潔で乾燥した飼養環境(Clean and dry environment)に置き、周囲蹄壁への物理的負荷(Mechanical load to surrounding hoof wall)を抑えるため、運動を控えることが重要です。
馬の蟻洞の治療において、蹄壁切除によって露出した箇所の深部組織が、完全に角化(Complete keratinization)した後には、この部位を充填材(Filling material)で被覆する手法が有効です。馬の蹄壁組織に類似する組成の充填材としては、ポリメタクリル酸メチル(Polymethylmethacrylate: PMMA)が最も頻繁に用いられていますが、その他の市販素材によっても良好な蹄壁被覆ができる場合もあります。蹄壁被覆に際しては、露出箇所の深部組織に刻みを入れたり(Undercutting the exposed tissue)、周囲の蹄壁を紙ヤスリなどで研磨することで(Sanding the surrounding hoof wall)、充填材が接着しやすくすることが重要で、蹄冠(Coronary band)はマスキングテープを貼って保護するようにします。
その後、罹患部位を洗浄&消毒し、ドライヤーによる温風などで乾燥させてから、十分な量のPMMAによって露出した深部組織および周囲蹄壁を被覆します。そして、充填材の表面を、木の舌圧子(Tongue depressor)などで平坦にならしてから、その上からKevler繊維を当てて、充填材が完全に固まるまで待ちます。この場合に、露出させた深部組織が汚染していて、被覆後に細菌&真菌感染(Bacterial/Fungal infections)を続発する危険があると判断される場合には、充填材に小さな穴を開けておくことで、蹄壁被覆後にも洗浄消毒剤による罹患箇所の処置ができるようにしておく方法が提唱されています。
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