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馬の文献:蟻洞(Moyer et al. 2006)

「馬の蹄壁欠損の整復のための蹄部準備」
Moyer WA, Honnas CM, Sigafoos RD. How to prepare equine hoof defects for repair. Proc AAEP. 2006; 52: 516-519.

この指導論文では、馬の蟻洞(Hoof wall separation)の治療の際に発生する蹄壁欠損(Hoof wall defects)の処置方法が解説されています。

馬の蹄壁欠損の整復のためには、アクリル混成体(Acrylic hybrids)やウレタン基材(Urethane-based material)などを用いて蹄壁を被覆する手法が応用されており、様々な種類の充填材が市販されています。これらの蹄壁被覆が失敗する原因としては、接着力が不十分で充填材が剥がれてしまったり、衝撃による破損、深部での細菌&真菌感染(Bacterial/Fungal infection)による充填材と蹄壁組織の離断などが挙げられます。(これらの原因のうち、最も重要なのは、接着力の不足による充填材の脱落と記述されていますが、湿気の多い日本では、真菌や細菌の感染のほうがより頻度の多い問題なのではないでしょうか?)

馬の蟻洞の治療に際しては、まず剥離した蹄壁(Separated hoof wall)を完全に切除して、その下部の蹄葉組織を、蹄鑢や電動バー(Motorized burr)などを使って除去します。この際に、細菌や真菌による汚染が疑われる場合には、洗浄&消毒剤による汚染組織の処置を先に行い、深部組織の角化(Keratinization)が見られた後に蹄壁被覆を行うことが推奨されています。また、欠損部周囲の蹄壁は、研磨ドラム(Drum sander)や紙ヤスリを用いて磨き、複数個所にT字型の刻みを削り入れることで、表面に塗られた充填材が堅固に密着するよう工夫する方法が提唱されています。

その後、十分な量の充填材によって欠損箇所の蹄壁を被覆しますが、この際には、外気温(Ambient temperature)が適切な場所で作業を行うことが重要です。また、充填材が完全に固まる前に患馬が動き過ぎると、蹄壁と充填材の堅固な接着(Firm adhesion)が妨げられる場合もあるので、適切な保定(必要ならば鎮静剤を用いて)を実施し、少なくとも24時間は患馬を馬房に入れておくことが推奨されています。蹄壁被覆後の充填材の脱落や破損は、通常は数日~一週間以内に生じることが知られていますが、堅固に接着された充填剤は通常の蹄壁組織と同様に、装蹄釘の挿入や蹄鉄の装着が可能となります。

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