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馬の文献:蟻洞(Chernich. 2010)

「白線異常:装蹄師の視点」
Dale Chernich. White line problem (Farrier’s viewpoint). White line case demonstrates effectiveness of team approach. Mentorship: A wise choice for all parties. American Farrier Journal. 2010; April: 82-84.

この指導論文(Tutorial article)では、馬の白線病(White line disease)によって生じた蟻洞(Hoof wall separation)に対する装蹄療法の一例が報告されています。

患馬は、ウォームブラッドの牝馬で、慢性進行性(Chronic progression)の白線病に起因する蟻洞を発症しました。そして、治療のために罹患部位の蹄壁の完全切除(Complete removal)、および研磨ドラムによる病巣清掃術(Debridement)が実施されました。しかし、深部組織の細菌&真菌感染(Bacterial/Fungal infection)の危険が大きいと判断されたため、蹄壁欠損箇所をアクリル樹脂(Acrylic resin)などの充填材(Filling material)で被覆する手法は避けられ、ハートバー蹄鉄(Heart-bar shoe)の装着が選択されました。

罹患蹄への装鉄に際しては、釘を打てない外側蹄壁(Lateral hoof wall)に対して堅固に蹄鉄を装着させるため、コの字状に上部へと伸展させた鉄板のアームを溶接し、そのアームの横行部位を欠損箇所よりも近位側の蹄壁に、螺子固定(Screw fixation)する手法が用いられました。また、ハートバー蹄鉄を併用することで、過重を蹄壁から蹄叉(Frog)へと移行させる工夫がなされています。患馬はその後、蹄壁治癒に六ヶ月間を要したものの、その期間中も騎乗に使役することができ、最終的には、良好な蹄壁成長によって、欠損箇所が完全に整復されたことが報告されています。

この報告のように、上部に伸展させた鉄板アームを介して装鉄する方法では、充填材による被覆を避けながら蹄壁欠損箇所の安定化(Stabilization)および衝撃からの保護作用を達成できるため、治療期間中も運動制限(Exercise restriction)は必要とされず、また、開放されたままの罹患箇所を、継続的に洗浄および消毒できるという利点があります。しかし、競走馬における調教&レース、障害飛越馬における着地時など、蹄部への衝撃が大きい状況では、このような蹄鉄が十分な強度を維持できない可能性もあります。また、この症例に対して、接着剤を用いてのグルーオン蹄鉄が選択されなかった理由は、明確には記述されていません。

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