馬の文献:末節骨骨折(Kaneps et al. 1993)
文献 - 2016年01月04日 (月)
「子馬の末節骨に見られる骨遊離体の特徴づけ」
Kaneps AJ, O'Brien TR, Redden RF, Stover SM, Pool RR. Characterisation of osseous bodies of the distal phalanx of foals. Equine Vet J. 1993; 25(4): 285-292.
この研究論文では、子馬の末節骨に見られる骨遊離体(Osseous bodies)の特徴づけ(Characterization)を行うため、32頭のサラブレッド子馬における末節骨のレントゲン検査(Radiography)、微小レントゲン検査(Microradiography)、および病理組織学的検査(Histopathological examination)が行われました。
結果としては、六頭(19%)の子馬の末節骨において骨遊離体が発見され、これらの病変は、微小レントゲン検査および病理組織学的検査でも確認されました。一方で、レントゲン検査上では正常であった十頭の子馬の末節骨の再検査では、微小レントゲン検査において六割(6/10頭)に骨折線(Fracture line)と小柱状骨橋(Trabecular bony bridging)が認められ、病理組織学的検査において半数(5/10頭)に骨折線と小柱状骨橋が認められました。このため、子馬の末節骨における骨遊離体は、骨折病変であるという結論が下され、また、レントゲン検査上では確認できない病態も多いことが示唆されました。
このような、子馬の末節骨の掌側突起(Palmar process)に見られる骨遊離体は、この論文の筆者によってタイプ7という新しい種類の末節骨骨折として定義され、骨折線が半円を描くように走行して骨遊離体を形成するという特徴から、タイプ1の末節骨骨折(非関節性の掌側突起骨折:Non-articular palmar process fracture)とは区別されています。また、骨遊離体を起こした子馬のうち、跛行(Lameness)を呈したのは三頭に過ぎなかったことから、不症候性(Asymptomatic)に進行している病態も比較的に多いと考えられています。
子馬におけるタイプ7末節骨骨折の病因論は、完全には確立されていませんが、末節骨底側縁(Solar margin of distal phalanx)に付着している深屈腱(Deep digital flexor tendon)の繊維に引っ張られて、この底側縁に小さな骨折片が生じるという発病機序が仮説されており、この腱繊維による牽引力と、体重負荷による圧迫力が集中しやすい掌側突起の底側部において、小骨の遊離に至る場合が多いと考えられています。また、微小レントゲン検査および病理組織学的検査などの所見から、掌側突起の分離骨化中心(Separate ossification center)や、発育性整形外科的疾患(Developmental orthopedic disease)が関与する可能性は低い、と考察されています。
タイプ7の末節骨骨折は、外科的な治療を要せず、馬房休養(Stall rest)によって十分な骨折部位の治癒が見られることから、その予後は一般的に良好であると考えられています。しかし、この病変の発生によって、蹄壁の成長や強度(Hoof wall strength/growth)に影響が出たり、屈曲性肢変形症(Flexural limb deformity)や、その他の末節骨疾患を併発&続発する可能性は否定できない、という考察もなされています。
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この研究論文では、子馬の末節骨に見られる骨遊離体(Osseous bodies)の特徴づけ(Characterization)を行うため、32頭のサラブレッド子馬における末節骨のレントゲン検査(Radiography)、微小レントゲン検査(Microradiography)、および病理組織学的検査(Histopathological examination)が行われました。
結果としては、六頭(19%)の子馬の末節骨において骨遊離体が発見され、これらの病変は、微小レントゲン検査および病理組織学的検査でも確認されました。一方で、レントゲン検査上では正常であった十頭の子馬の末節骨の再検査では、微小レントゲン検査において六割(6/10頭)に骨折線(Fracture line)と小柱状骨橋(Trabecular bony bridging)が認められ、病理組織学的検査において半数(5/10頭)に骨折線と小柱状骨橋が認められました。このため、子馬の末節骨における骨遊離体は、骨折病変であるという結論が下され、また、レントゲン検査上では確認できない病態も多いことが示唆されました。
このような、子馬の末節骨の掌側突起(Palmar process)に見られる骨遊離体は、この論文の筆者によってタイプ7という新しい種類の末節骨骨折として定義され、骨折線が半円を描くように走行して骨遊離体を形成するという特徴から、タイプ1の末節骨骨折(非関節性の掌側突起骨折:Non-articular palmar process fracture)とは区別されています。また、骨遊離体を起こした子馬のうち、跛行(Lameness)を呈したのは三頭に過ぎなかったことから、不症候性(Asymptomatic)に進行している病態も比較的に多いと考えられています。
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タイプ7の末節骨骨折は、外科的な治療を要せず、馬房休養(Stall rest)によって十分な骨折部位の治癒が見られることから、その予後は一般的に良好であると考えられています。しかし、この病変の発生によって、蹄壁の成長や強度(Hoof wall strength/growth)に影響が出たり、屈曲性肢変形症(Flexural limb deformity)や、その他の末節骨疾患を併発&続発する可能性は否定できない、という考察もなされています。
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