馬の文献:中節骨骨折(Colahan et al. 1981)
文献 - 2016年02月01日 (月)
「馬の中節骨骨折の治療」
Colahan PT, Wheat JD, Meagher DM. Treatment of middle phalangeal fractures in the horse. J Am Vet Med Assoc. 1981; 178(11): 1182-1185.
この研究論文では、馬の中節骨骨折(Middle phalangeal fracture)の治療効果および予後を評価するため、1970~1977年にかけて中節骨骨折を呈した47頭の患馬の医療記録(Medical records)の回顧的解析(Retrospective analysis)が行われました。
結果としては、47頭の中節骨骨折の罹患馬のうち、経過追跡(Follow-up)が出来なかった六頭を除く41頭を見ると、安楽死(Euthanasia)となったのは16頭で、短期生存率(Short-term survival rate)は61%(25/41頭)でしたが、生存馬のうち18頭は繁殖馬としての飼養にとどまり、運動復帰を果たしたのは17%(7/41頭)であったことが報告されています。このうち、掌側&底側隆起骨折(Palmar/Plantar eminence fracture)の罹患馬では、短期生存率は88%(7/8頭)で運動復帰率は38%(3/8頭)であったのに対して、粉砕骨折(Comminuted fracture)の罹患馬では、短期生存率は55%(18/33頭)で運動復帰率は12%(4/33頭)に過ぎなかったことが示されました。このため、一般的に馬の中節骨骨折では、斃死率(Mortality rate)は中程度であったものの、競技&競争への復帰を果たす馬の割合はそれほど高くなく、特に粉砕骨折の症例では、予後不良を呈する可能性もかなり高いことが示唆されました。
この研究では、中節骨骨折の罹患馬に対しては、螺子固定術(Lag-screw fixation)と遠位肢ギプス装着(Distal limb cast placement)の併用による治療(=外科治療)、遠位肢ギプス装着のみによる治療(=保存療法)、もしくは馬房休養(Stall rest)のみによる治療(=無治療)の三つのうち、いずれかが選択されました。そして、経過追跡ができた41頭の生存率と運動復帰率を見ると、外科治療が応用された場合には生存率は71%(10/14頭)で運動復帰率は29%(4/14頭)、保存療法が応用された場合には生存率は67%(12/18頭)で運動復帰率は11%(2/18頭)、無治療であった場合には生存率は33%(3/9頭)で運動復帰率は11%(1/9頭)であったことが示されました。このため、螺子固定術による外科治療法では、ギプス装着のみによる保存療法と比較して、生存率そのものには大きな差は見られませんでしたが、競技&競争へ復帰できる可能性が高くなる傾向が認められました。また、外科治療が応用された場合にギプス装着を要する期間(平均66日)は、保存療法が応用された場合にギプス装着を要する期間(平均100日)よりも、顕著に短いことが示唆されています。
この研究では、47頭の中節骨骨折の罹患馬では、後肢の骨折(34/47頭)が前肢の骨折(13/47頭)よりも顕著に多いというデータが示されました。また、中節骨骨折の症例馬のうち、クォーターホースが57%(27/47頭)を占め、これは来院馬全体に占めるクォーターホースの割合(33%)よりも高い傾向が認められました。さらに、47頭の中節骨骨折の罹患馬に対して、同期間内での総来院数は34400症例で、中節骨骨折の有病率(Prevalence)は0.14%(47/34400頭)であったことが報告されています。
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この研究論文では、馬の中節骨骨折(Middle phalangeal fracture)の治療効果および予後を評価するため、1970~1977年にかけて中節骨骨折を呈した47頭の患馬の医療記録(Medical records)の回顧的解析(Retrospective analysis)が行われました。
結果としては、47頭の中節骨骨折の罹患馬のうち、経過追跡(Follow-up)が出来なかった六頭を除く41頭を見ると、安楽死(Euthanasia)となったのは16頭で、短期生存率(Short-term survival rate)は61%(25/41頭)でしたが、生存馬のうち18頭は繁殖馬としての飼養にとどまり、運動復帰を果たしたのは17%(7/41頭)であったことが報告されています。このうち、掌側&底側隆起骨折(Palmar/Plantar eminence fracture)の罹患馬では、短期生存率は88%(7/8頭)で運動復帰率は38%(3/8頭)であったのに対して、粉砕骨折(Comminuted fracture)の罹患馬では、短期生存率は55%(18/33頭)で運動復帰率は12%(4/33頭)に過ぎなかったことが示されました。このため、一般的に馬の中節骨骨折では、斃死率(Mortality rate)は中程度であったものの、競技&競争への復帰を果たす馬の割合はそれほど高くなく、特に粉砕骨折の症例では、予後不良を呈する可能性もかなり高いことが示唆されました。
この研究では、中節骨骨折の罹患馬に対しては、螺子固定術(Lag-screw fixation)と遠位肢ギプス装着(Distal limb cast placement)の併用による治療(=外科治療)、遠位肢ギプス装着のみによる治療(=保存療法)、もしくは馬房休養(Stall rest)のみによる治療(=無治療)の三つのうち、いずれかが選択されました。そして、経過追跡ができた41頭の生存率と運動復帰率を見ると、外科治療が応用された場合には生存率は71%(10/14頭)で運動復帰率は29%(4/14頭)、保存療法が応用された場合には生存率は67%(12/18頭)で運動復帰率は11%(2/18頭)、無治療であった場合には生存率は33%(3/9頭)で運動復帰率は11%(1/9頭)であったことが示されました。このため、螺子固定術による外科治療法では、ギプス装着のみによる保存療法と比較して、生存率そのものには大きな差は見られませんでしたが、競技&競争へ復帰できる可能性が高くなる傾向が認められました。また、外科治療が応用された場合にギプス装着を要する期間(平均66日)は、保存療法が応用された場合にギプス装着を要する期間(平均100日)よりも、顕著に短いことが示唆されています。
この研究では、47頭の中節骨骨折の罹患馬では、後肢の骨折(34/47頭)が前肢の骨折(13/47頭)よりも顕著に多いというデータが示されました。また、中節骨骨折の症例馬のうち、クォーターホースが57%(27/47頭)を占め、これは来院馬全体に占めるクォーターホースの割合(33%)よりも高い傾向が認められました。さらに、47頭の中節骨骨折の罹患馬に対して、同期間内での総来院数は34400症例で、中節骨骨折の有病率(Prevalence)は0.14%(47/34400頭)であったことが報告されています。
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