馬の文献:中節骨骨折(Galuppo et al. 2000)
文献 - 2016年02月13日 (土)
「馬の中節骨の粉砕骨折に対する二重プレート固定法およびY字プレート固定法の生体力学的比較」
Galuppo LD, Stover SM, Willits NH. A biomechanical comparison of double-plate and Y-plate fixation for comminuted equine second phalangeal fractures. Vet Surg. 2000; 29(2): 152-162.
この研究論文では、馬の中節骨の粉砕骨折(Comminuted fracture of middle phalanx)における、二重プレート固定法(Double-plate fixation)およびY字プレート固定法(Y-plate fixation)の有用性を評価するため、六組の屍体肢(Cadaveric limbs)を用いて実験的に作り出した中節骨の粉砕骨折に対して、二重プレートまたはY字プレートを使った冠関節固定術(Pastern arthrodesis)の生体力学的な比較(Biomechanical comparison)が行われました。
結果としては、二重プレート固定法とY字プレート固定法を生体力学的に比較した場合、どの測定値にも有意差は認められませんでした。そして、Y字プレート固定法のほうが無処置の肢(Intact limb)に比べて、降伏荷重量(Yield load)、降伏変位量(Yield displacement)、降伏エネルギー量(Yield energy)、破壊荷重量(Failure load)、硬度(Stiffness)などが、有意に高い値を示しました。このため、馬の中節骨の粉砕骨折におけるY字プレート固定法では、二重プレート固定法に匹敵する強度の冠関節固定術を達成でき、外科的治療のひとつの術式として有効であることが示唆されました。
一般的に、馬の中節骨骨折におけるY字プレート固定法では、従来の術式である二重プレート固定法に比較して、プレート遠位端を三本の螺子で中節骨に設置できる(二重プレート固定法では二本の螺子)、プレート遠位端が凹型をしているため蹄関節包(Coffin joint capsule)や末節骨伸筋突起(Extensor process of distal phalanx)に接触しない、プレートの幅が広いので冠関節の屈折力(Bending force)をより効果的に中和できる、などの利点が挙げられています。また、Y字プレート固定法では、掌側隆起骨折片(Palmar eminence fracture fragment)へと達する全ての螺子を、プレート孔を通しながら連動させるように挿入することができることから(遠位側のプレート孔の内径が大きめに作られているため)、この骨折片をつなぎ止めることで遠位種子骨靭帯(Distal sesamoidean ligament)から得られるテンションバンド効果(Tension band effect)を、より有効に冠関節固定部へと作用させられるという長所があります。
この研究では、Y字プレート固定法のほうが二重プレート固定法に比べて、基節骨(Proximal phalanx)に挿入された螺子の最終捻転力(Final screw torque)が有意に高いことが示されました。Y字プレート固定法において基節骨へと達する螺子は六本で、二重プレート固定法において基節骨へと達する螺子の八本よりも少ないものの(螺子の太さは同じ)、各螺子に掛けられる捻転力が有意に高いため、両者は同程度の固定強度を得られたと推測されています。そして、このことが、生体力学的検査(Biomechanical testing)の終了点では、いずれの固定法でも中節骨の近位端部(Proximal aspect of middle phalanx)が破損して、基節骨に設置されているプレート部分は堅固に保持されていた要因であると考察されています。
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この研究論文では、馬の中節骨の粉砕骨折(Comminuted fracture of middle phalanx)における、二重プレート固定法(Double-plate fixation)およびY字プレート固定法(Y-plate fixation)の有用性を評価するため、六組の屍体肢(Cadaveric limbs)を用いて実験的に作り出した中節骨の粉砕骨折に対して、二重プレートまたはY字プレートを使った冠関節固定術(Pastern arthrodesis)の生体力学的な比較(Biomechanical comparison)が行われました。
結果としては、二重プレート固定法とY字プレート固定法を生体力学的に比較した場合、どの測定値にも有意差は認められませんでした。そして、Y字プレート固定法のほうが無処置の肢(Intact limb)に比べて、降伏荷重量(Yield load)、降伏変位量(Yield displacement)、降伏エネルギー量(Yield energy)、破壊荷重量(Failure load)、硬度(Stiffness)などが、有意に高い値を示しました。このため、馬の中節骨の粉砕骨折におけるY字プレート固定法では、二重プレート固定法に匹敵する強度の冠関節固定術を達成でき、外科的治療のひとつの術式として有効であることが示唆されました。
一般的に、馬の中節骨骨折におけるY字プレート固定法では、従来の術式である二重プレート固定法に比較して、プレート遠位端を三本の螺子で中節骨に設置できる(二重プレート固定法では二本の螺子)、プレート遠位端が凹型をしているため蹄関節包(Coffin joint capsule)や末節骨伸筋突起(Extensor process of distal phalanx)に接触しない、プレートの幅が広いので冠関節の屈折力(Bending force)をより効果的に中和できる、などの利点が挙げられています。また、Y字プレート固定法では、掌側隆起骨折片(Palmar eminence fracture fragment)へと達する全ての螺子を、プレート孔を通しながら連動させるように挿入することができることから(遠位側のプレート孔の内径が大きめに作られているため)、この骨折片をつなぎ止めることで遠位種子骨靭帯(Distal sesamoidean ligament)から得られるテンションバンド効果(Tension band effect)を、より有効に冠関節固定部へと作用させられるという長所があります。
この研究では、Y字プレート固定法のほうが二重プレート固定法に比べて、基節骨(Proximal phalanx)に挿入された螺子の最終捻転力(Final screw torque)が有意に高いことが示されました。Y字プレート固定法において基節骨へと達する螺子は六本で、二重プレート固定法において基節骨へと達する螺子の八本よりも少ないものの(螺子の太さは同じ)、各螺子に掛けられる捻転力が有意に高いため、両者は同程度の固定強度を得られたと推測されています。そして、このことが、生体力学的検査(Biomechanical testing)の終了点では、いずれの固定法でも中節骨の近位端部(Proximal aspect of middle phalanx)が破損して、基節骨に設置されているプレート部分は堅固に保持されていた要因であると考察されています。
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