馬の文献:球節破片骨折(Simon et al. 2004)
文献 - 2016年03月07日 (月)

「23頭のスタンダードブレッド競走馬における近位底側基節骨の軸性骨軟骨片に対する電気メスを用いての関節鏡的摘出」
Simon O, Laverty S, Bouré L, Marcoux M, O Szöke M. Arthroscopic removal of axial osteochondral fragments of the proximoplantar aspect of the proximal phalanx using electrocautery probes in 23 standardbred racehorses. Vet Surg. 2004; 33(4): 422-427.
この症例論文では、馬の球節(Meta-carpo/tarso-phalangeal joint: Fetlock joint)の近位底側基節骨(Proximoplantar aspect of the proximal phalanx)における破片骨折(Chip fracture)に対する、電気メス(Electrocautery probe)を用いての関節鏡的摘出(Arthroscopic removal)の治療効果を評価するため、近位底側基節骨の軸性骨軟骨片(Axial osteochondral fragment)を呈した23頭のスタンダードブレッド競走馬(28関節、33骨片)の医療記録(Medical records)の回顧的解析(Retrospective analysis)が行われました。
結果としては、23頭の全ての患馬において、電気メスを用いての関節鏡手術によって、迅速かつ容易に骨片の摘出が達成され、術中および術後合併症(Intra/Post-operative complications)は見られませんでした。また、関節鏡手術を介しての骨折片の摘出によって、患馬の全頭が調教に復帰し、手術前に出走していた馬の79%(7/8頭)がレース復帰を果たし、手術前に出走していなかった馬の36%(4/11頭)がレースデビューしたことが示されました。このため、近位底側基節骨の骨軟骨片を呈した馬では、電気メスを用いての関節鏡手術によって、良好な予後を示し、レース復帰を果たす馬の割合が高いことが示唆されました。
馬の近位底側基節骨の骨軟骨片における、電気メスを用いての関節鏡手術の利点としては、(1)付着している線維組織(Fibrous tissue attachment)を焼灼することで、骨片の摘出が迅速、正確、かつ容易に行える、(2)骨片切除時の出血が殆ど無いので、止血帯(Tourniquet)を使う必要がなく、術中の関節鏡下での視野(Intra-operative arthroscopic view field)も良好に保たれる、(3)鋭利なメス刃を使用しないので関節軟骨(Articular cartilage)の医原性損傷(Iatrogenic damage)の危険を最小限に抑えられる、などが挙げられています。
この研究では、関節鏡手術の前後にレースへ出走した8頭を見ると、出走数は術前術後ともに11回で、平均獲得賞金は術前7,900ドルに対して術後6,100ドルというように、手術の前後で競走成績に有意差は認められませんでした。このため、レース出走をしているスタンダードブレッド競走馬においては、近位底側基節骨の骨軟骨片に対する電気メスを用いた関節鏡手術によって、競走成績の低下を招くことなく、良好なレース実績を継続できることが示唆されました。
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