馬の文献:球節破片骨折(Declercq et al. 2008)
文献 - 2016年03月08日 (火)
「ウォームブラッドの球節滑膜パッドにおける骨軟骨片形成」
Declercq J, Martens A, Bogaert L, Boussauw B, Forsyth R, Boening KJ. Osteochondral fragmentation in the synovial pad of the fetlock in Warmblood horses. Vet Surg. 2008; 37(7): 613-618.
この症例論文では、馬の球節(Meta-carpo/tarso-phalangeal joint: Fetlock joint)の滑膜パッド(Synovial pad)における骨軟骨片形成(Osteochondral fragmentation)の病態を評価するため、球節滑膜パッドに骨軟骨片を呈した104頭のウォームブラッド(127関節、142骨片)の医療記録(Medical records)の解析が行われました。
この研究では、104頭の患馬のうち、跛行(Lameness)を呈したのは2%(2/104頭)の馬にとどまり、また、関節膨満(Joint effusion)が見られたのは11%(11/104頭)の馬のみでした。しかし、関節鏡による骨片摘出の際に、32%(40/127関節)の球節において異常所見が認められ、これには、滑膜炎(Synovitis)、重度の滑膜増生(Severe synovial proliferation)、顆状突起背側面の磨耗線(Wear lines at dorsal surface of the condyle)、関節軟骨の糜爛(Articular cartilage erosion)などが含まれました。そして、サイズの大きい(>10mm)骨軟骨片の形成と、これらの重篤な関節病態のあいだには、有意な相関関係が認められました。
一般的に、ウォームブラッドにおける球節滑膜パッドの骨軟骨片は、跛行や関節膨満などの臨床上の異常を呈することなく、購入前検査(Pre-purchase examination)の際のレントゲン撮影で偶発的に発見(Incidental finding)される場合が多いことが知られています。このため、この滑膜パッドの骨軟骨片を放っておくべきか、外科的に摘出するべきかに関しては、賛否両論(Controversy)があります。しかし、この研究では、骨片のサイズと関節異常所見のあいだに相関が見られたことから、滑膜パッドにおける骨軟骨片形成は、球節の変性関節疾患(Degenerative joint disease)の初期病態である可能性があると考察されており、見つかった全ての骨軟骨片は、出来るだけ早期に関節鏡手術によって摘出することが推奨されています。
この研究では、摘出された骨片の病理組織学的検査(Histopathologic examination)において、骨性中心(Bony center)の一方の表面を軟骨組織が覆い、その外側の全周を線維性組織(Fibrous tissue)が包んでいる所見が認められました。これは、骨軟骨症(Osteochondrosis)の骨片に見られる、中心部での軟骨遺残(Retained cartilage foci in trabecular bony center)(=軟骨内骨化不全:failure in endochondral ossification)とは明らかに異なった病態を示しており、これらの骨片は骨軟骨症によって生じたものではないことが示唆されました。しかし一方で、二次性骨化中心(Secondary center of ossification)、慢性破片骨折片(Chronic chip fracture fragment)、滑膜軟骨腫症(Synovial chondromatosis)などとの病理組織学的な類似点(Histopathologic resemblance)も認められておらず、この研究の考察では、球節滑膜パッドにおける骨軟骨片形成の病因論(Etiology)は、明確には結論付けられていません。
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この症例論文では、馬の球節(Meta-carpo/tarso-phalangeal joint: Fetlock joint)の滑膜パッド(Synovial pad)における骨軟骨片形成(Osteochondral fragmentation)の病態を評価するため、球節滑膜パッドに骨軟骨片を呈した104頭のウォームブラッド(127関節、142骨片)の医療記録(Medical records)の解析が行われました。
この研究では、104頭の患馬のうち、跛行(Lameness)を呈したのは2%(2/104頭)の馬にとどまり、また、関節膨満(Joint effusion)が見られたのは11%(11/104頭)の馬のみでした。しかし、関節鏡による骨片摘出の際に、32%(40/127関節)の球節において異常所見が認められ、これには、滑膜炎(Synovitis)、重度の滑膜増生(Severe synovial proliferation)、顆状突起背側面の磨耗線(Wear lines at dorsal surface of the condyle)、関節軟骨の糜爛(Articular cartilage erosion)などが含まれました。そして、サイズの大きい(>10mm)骨軟骨片の形成と、これらの重篤な関節病態のあいだには、有意な相関関係が認められました。
一般的に、ウォームブラッドにおける球節滑膜パッドの骨軟骨片は、跛行や関節膨満などの臨床上の異常を呈することなく、購入前検査(Pre-purchase examination)の際のレントゲン撮影で偶発的に発見(Incidental finding)される場合が多いことが知られています。このため、この滑膜パッドの骨軟骨片を放っておくべきか、外科的に摘出するべきかに関しては、賛否両論(Controversy)があります。しかし、この研究では、骨片のサイズと関節異常所見のあいだに相関が見られたことから、滑膜パッドにおける骨軟骨片形成は、球節の変性関節疾患(Degenerative joint disease)の初期病態である可能性があると考察されており、見つかった全ての骨軟骨片は、出来るだけ早期に関節鏡手術によって摘出することが推奨されています。
この研究では、摘出された骨片の病理組織学的検査(Histopathologic examination)において、骨性中心(Bony center)の一方の表面を軟骨組織が覆い、その外側の全周を線維性組織(Fibrous tissue)が包んでいる所見が認められました。これは、骨軟骨症(Osteochondrosis)の骨片に見られる、中心部での軟骨遺残(Retained cartilage foci in trabecular bony center)(=軟骨内骨化不全:failure in endochondral ossification)とは明らかに異なった病態を示しており、これらの骨片は骨軟骨症によって生じたものではないことが示唆されました。しかし一方で、二次性骨化中心(Secondary center of ossification)、慢性破片骨折片(Chronic chip fracture fragment)、滑膜軟骨腫症(Synovial chondromatosis)などとの病理組織学的な類似点(Histopathologic resemblance)も認められておらず、この研究の考察では、球節滑膜パッドにおける骨軟骨片形成の病因論(Etiology)は、明確には結論付けられていません。
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